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ペトロブラス=天然ガスの新規契約を拒否=岩塩層下の開発優先で=電力開発事業にも影響か=風力や太陽光発電は急務

ニッケイ新聞 2011年11月24日付け

 ペトロブラスのジョゼ・セルジオ・ガブリエリ総裁が22日、2016年までは天然ガス供給の新規契約に応じないと発表したと23日付ブラジルメディアが報じた。この決定が12月と来年3月に行われる電力開発事業への入札に影響を与える事は必至で、エネルギー計画全体の見直しも必要となりそうだ。

 ない袖は振れぬ—。国家電力庁(Aneel)が12月に行われる電力開発事業への入札規定を承認した直後にペトロブラスが発表した新規契約停止の理由は、まさにこの言葉通りの内容だ。
 ガブリエリ総裁によると、天然ガスは岩塩層下の石油開発にも使われるため、必要量を確保した後に残るガスしか売れないという。もちろん、既に成立した天然ガス供給契約は有効で、約束通り履行するが、少なくとも16年までは新規契約は結ばないというのがペトロブラス側の決定だ。
 この発表が直接影響するのは、12月20日に入札予定の火力発電所建設計画で、377件、総発電量2万4200メガワット(以下、MW)の火力発電計画中、天然ガス利用のものは1万2900MW分に上る。
 この量は、シングー川に建設中のベロ・モンテ水力発電所の発電能力上限(1万1233MW)以上だが、12月入札分は16年1月1日からの操業が義務付けられており、今回の決定で実質不能となる天然ガスによる発電計画への応札は皆無となる見込みだ。
 12月の入札は、既に環境許可取得が見込まれている水力発電計画は10件中3件のみなどの問題もあって難航が予想されていたが、今回のペトロブラスの発表はそれに追い討ちをかけた。
 岩塩層下の石油開発のための天然ガス使用は、リオ州のComperjだけで1日1500万立方メートルで、サンパウロ州のComgasが1日に取り扱う量を上回る。
 ペトロブラスの開発事業は燃料依存型のものが多く、これまでの開発計画の遅れが産油量や天然ガス供給量確保を不可能としているというのは、ブラジル・インフラ・ストラクチャー・センター(CBIE)のアドリアノ・ピレス氏。2020年の石油日産量を500万立方メートルにとの目標も、350万立方メートルに達したら万々歳と手厳しい。
 ただ、降水量により発電能力に差が生じる水力発電への依存率が80%のブラジルにとり、今回のペトロブラスの決定がエネルギー計画全体に影響を与える事は必至だ。
 水力発電量低下時の不足分を補うには、原油や木炭、バイオマスなどを利用した火力発電をとの声も高いが、これらの手段では温室効果ガス排出量が増えるため、導入が急がれるのは風力や太陽光を利用した発電。自然条件に左右されるため、安定供給対策はやはり必要だが、原子力発電は安全対策上の不安が残る。