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エイズ=ブラジルの治療率は6〜8割=国連の合同計画が発表=「治療先進国」入り逃す=早期診断の体制作りが鍵

ニッケイ新聞 2011年11月26日付け

 国際連合エイズ合同計画(Unaids)の発表によると、ブラジルのHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者が治療を受けている割合は60〜79%で、「治療先進国」入りを逃したと22日付エスタード紙が報じた。

 感染者の治療率が80%以上の「治療先進国」はチリやキューバ、ナミビアなども含む11カ国で、対策の遅れが見られるブラジルだが、同計画ブラジル担当ディレクターのペドロ・シェケール氏は、「この数字を問題視するのではなく、むしろこれからの課題と捉えるべき」とした上で、「早期診断を改善する必要がある」と強調した。
 ブラジルの治療率が低いのは、感染を認知しておらず、早期治療を受けられない人が25〜30万人いると見られているからで、診断を受けた人の治療率は95%以上と世界的にも高い数値となっている。USPのアレシャンドレ・グランジェイロ氏の調査によると、国内のエイズによる死者の40%に治療開始の遅れがみられたという。
 一方、アレシャンドレ・パディーリャ保健相は「早期診断の拡大計画は進行している」と表明。今後は公共医療機関での迅速検査や「ロック・イン・リオ」で実施されたような若者向けのキャンペーン活動に注力する予定だという。
 また、各地域の実態に即したキャンペーン実施にも力を入れる考えで、公報費も来年はさらに上乗せされる見込み。
 一方シェケール氏は、「世界的なエイズ対策の推進には、先進国が支援に関する公約を果たすことが必要」と指摘。先進国からの支援は09年が76億ドル、10年は69億ドルに減少した。
 同日付フォーリャ紙によると、世界的にみたエイズによる死者ならびに新規のウイルス感染者は減少傾向にある。死者数は05年の220万人をピークに昨年は180万人、新規のウイルス感染者数も97年の320万人をピークに昨年は270万人に減少した。
 現時点では世界中のウイルス感染者は発病の有無に関わらず3400万人。最も多いのはサブサハラ(アフリカ大陸サハラ砂漠より南側)の2290万人で、以下、南、東南アジア400万人、南米150万人、北米130万人と続き、人口以上に経済力に比例した数字といえる。
 昨今の経済危機はエイズ対策にも影響を与えていることになるが、シェケール氏は「キャンペーンの対象者を拡大する必要性がある」とも強調、「ユネスコは6歳からの教育開始を奨励しているが、ブラジルでは12歳から始めており、要検討事項だ」と指摘した。
 サンパウロ州保健局は22日、無料で検査を実施する早期診断キャンペーン「Fique Sabendo」を今月24日から、「世界エイズデー」の来月1日まで州内各地で実施と発表。会場などの詳細は0800・16・2550か、www.crt.saude.sp.gov.brで。