ニッケイ新聞 2011年11月29日付け
24日午後3時半ごろ、南米産業開発青年隊6期生の林省二さん(72、福島)がサンパウロ州マイリンケ市ドナ・カタリーナ区の自宅で殺害され、地元や南青協関係者に衝撃を与えている。警察は同日、自宅の敷地内に所有する借家を借りていたヴィルソン・サントス・コスタ容疑者(37)を逮捕した。翌25日、同市近郊のアラサリグアマ市であった葬儀には、青年隊の元隊員ら約20人も参列、冥福を祈った。初七日法要はなく、四十九日法要の日時は未定。
1960年10月11日、あるぜんちな丸で来伯、一年間セーラ・ドス・ドウラードスの訓練所を経てドナ・カタリーナ市に移り住んだ。
草分け的存在として農場でびわやポンカン栽培、養蜂などに携わり、約3年前に農場を売却、同市に土地を購入して自宅を構え、妻の悦子さんと2人で生活していた。
悦子さんの証言によれば林さんは同日、自宅の台所でヴィルソン容疑者が滞納していた家賃の支払いを求めていた。悦子さんは傍でその様子を見ていたが、特に異常は感じなかったという。
一旦、その場を離れた容疑者は包丁を手に再び台所に侵入し、林さんの胸、腕、頭の3カ所を刺され、失血死した。悦子さんも左腕を切られたが命に別状はなかった。
衝撃隠せない隊員ら=「粘り強い人だった」
「時々体調を壊していたから、初めはそれで亡くなったのかと思った」と驚きを隠せない様子で語る青年隊同期の鈴木源治さん(73、山形、6期生)は「時々家に行っていたけど、もめている感じはなかったが…」と声を落とした。
早川量通さん(68、北海道、8期生)は訃報を聞き、伊藤和夫さん(72、北海道、7期生)と同日夕方、自宅に駆けつけた。
「犯行現場はまだ血の海。お悔やみを言うと一番下の息子が抱きついてきて、思わず涙がこぼれた」(早川さん)。
伊藤さんは「真面目で人の恨みを買うような人じゃなかった。奥さんと2人で楽しく余生を送ろうとしていた時だったのに本当に気の毒」と仲間の死を悼んだ。
南青協の盆子原国彦会長(70、広島、6期生)は「よく青年隊の皆でポンカン狩りに行ってお世話になった。しっかりしていてとても粘り強い人だった」とその人となりを語った。