ニッケイ新聞 2011年11月29日付け
海は大きくて深い。エベレストの山々をもすっぽり呑み込み、東京もNYもゴクリ。陸地やアマゾン河をも胃の腑に送り、地球を海のしょっぱい水で覆い尽すのだから凄い。海と陸地の広さは7対3。地球は海から成り立っているとも見える。近頃は、日本の深海調査艇「しんかい」が水深6500メートルに達しているし、ロシアの「コンスル」の性能も素晴らしい▼だが—である。海には謎が多い。云えば、解からないことだらけなのである。「しんかい」は海底の鉱物資源や地震に関する情報収集、深海の魚類調査などで大きな成果を上げてはいるが、それでも「解からない」ことがいっぱいある。あの「魚博士」の故末広泰雄氏(東大名誉教授)でさえも「海の深いところに棲む魚については解からない」と書いているし、まったくのところ—謎と謎に満ちているのが海なのである▼海には30メートルにもなる大きなシロナガス鯨からプランクトンなどの小さな小さなものまで約1千万種類もの生き物がいるとされるが、海の魚はほぼ1万6千種もいる。尤も、これには、深海のものは未知であり、もっともっと種類が増える可能性を秘めている。それに—魚や生き物の生態についても、謎だらけなのである▼あのウナギにしても、アリストテレスは「泥より生ず」とし、ヨーロッパでは「馬の毛から」の言い伝えもある。土用の丑の日は—の日本列島でも同じようなものだが、ウナギが太平洋マリアナ諸島のスルガ海山近くで産卵するのを東大の塚本勝巳教授が発見したのも昨年と、解からぬことばかりが—我らが紺碧の海なのである。(遯)