ニッケイ新聞 2011年11月30日付け
ブラジル民主社会党(PSDB)が2012年のサンパウロ市長選に独自の候補を立てるべく、出馬の意向を表明済みの候補達による討論会を行ったと29日付エスタード紙などが報じた。同党が独自の候補擁立の姿勢を鮮明にした事で、カサビ現市長が立ち上げた社会民主党(PSD)の出方にも影響が出てきそうだ。
労働者党(PT)がフェルナンド・ハダジ現教育相擁立を決めた後、去就が注目されていたPSDBが27日、ジェラウド・アウキミンサンパウロ州知事と出馬の意向を表明している4人の候補との会談を行い、28日には同4候補による党内討論会が行われた。
既に4期連続16年サンパウロ州政権を担当、現知事が任期を全うすれば20年の長期政権となるPSDBがサンパウロ市長選への独自候補擁立を決めた事は22日付同党サイトにも掲載され、具体的な絞込み作業開始が27日の会談。28日の討論会は、最終候補決定に向けた4回の討論会の初回だ。
出馬の意向表明は、リカルド・トリポリ下議とアンドレア・マタラゾサンパウロ州文化局長、ジョゼ・アニーバウサンパウロ州エネルギー局長、ブルーノ・コーヴァスサンパウロ州環境局長の4人で、討論会では現市政の問題点などを指摘する意見も飛び出した。
一方、27日の会談後にアウキミン知事がPSDBの独自候補擁立を明言した事で、PSDの最有力候補であったギリェルメ・アフィフ・ドミンゴスサンパウロ州副知事が出馬の意向を撤廃。カサビ市長はエンリッケ・メイレーレス元中銀総裁を軸とする第二プラン推進を余儀なくされている。
PSDは2002年知事選でPSDBと連立を組んだ民主党(DEM)出身者が主流。PSDBとDEMは、2004年のサンパウロ市長選も、ジョゼ・セーラ元知事を市長、カサビ氏を副市長候補として勝利を収めたが、再選を目指すカサビ氏とアウキミン現知事が争った2008年サンパウロ市長選で連立体制にひびが入った。
ただ、PSD側の最大の泣き所は、無料のTV広報の時間枠が取れない事。時間配分は新党成立前の選挙の結果に基づいてなされるため、今年結成の同党には割り当てがなく、昨今表面化した環境車検担当のControlar社との契約問題を巡る疑惑でカサビ市長のイメージに傷がついた事もマイナス要因だ。
現時点でPSDがPSDBの副にあまんじる可能性があるのは、セーラ氏を市長候補に担ぎ出した場合のみで、党内でも同氏を最有力候補と見る声があるが、セーラ氏自身は出馬の意向を否定。
一方、28日に知事官邸で開かれたセレモニー後、市長選について尋ねられたサンパウロ市長は、PSDBほどの党なら独自候補擁立は当たり前と評価。あれだけ大きな一枚岩相手ではPSDを正、PSDBを副とする連立成立は困難との認識を窺わせる発言も行ったようだ。