ニッケイ新聞 2011年12月9日付け
レジストロ日伯文化協会(金子国栄会長)がオペラ歌手・田中公道を招き、先月29日夜、KKKK多目的ホールでショーを開催した。同市役所およびマックス・プロドゥソインスが後援した。
海外公演は427回を数え、数々の国際コンクールに入賞した輝かしい経歴を持つ田中さんは、日本の4大学で名誉教授および教授も務める。
肺を患い寂しい一時期を送った戦後間もない18歳の頃、イタリアのテノールオペラ歌手の歌声を聞き、その高音に感動した。オペラの道を歩むことを決意、23歳でプロデビューを果たした。74歳となった今も、青年の様に若々しく強い美声で観衆を魅了する。
「パヴァロッティさん(イタリアのオペラ歌手)は70歳で亡くなりましたが、私は最高年齢のオペラ歌手の記録を作る心算です」と笑う。昨年、プロ生活50周年の記念公演を催した。
ブラジルとの交流は、島根県出身であることから1996年、ブラジル島根県人会創立40周年に招待されたのを機に始まった。現在は同県の親善大使として活躍する。
これまでに当地を訪れた数は14回に上り、今年8月もサンパウロ州オランブラ、サルトなど20市町村で公演を行なったほか、カンピーナス市では当地新鋭オペラ歌手が参加するコンクールの審査員も務め、ブラジル内多くの団体から表彰もされている。
今回のショーは、カンピーナス文協の小林アパレシーダ文化担当理事を通じて実現、田中さんの妻宏子さんがピアノを演奏、カンピーナス在住のソプラノ歌手・坂野恵美子さんが友情出演した。
田中さんは「帰れソレントへ」「荒城の月」、「浜千鳥」「マイウェイ」など計15曲を披露し万雷の拍手浴びた。
終演後、セッテ・バーラス市から訪れた高齢のブラジル人男性は、舞台に上ると田中さんを抱擁し「素晴らしい歌を有難う御座いました。今日のような感激は何年も感じた事がありませんでした。思わず涙が出ました」と喜びを語った。
これからも、田中さんの美しい歌声は世界の各地で人々の心を潤すに違いない。(金子国栄さん通信)