ニッケイ新聞 2011年12月13日付け
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで10日、10月の大統領選で圧倒的な強さを見せたクリスチーナ・フェルナンデス・キルチネル大統領の就任式が行われた。11日付伯字紙によれば、女性ではラ米初の再選を果たした同大統領は、磐石(ばんじゃく)の体制で2015年まで4年間の歩みを踏み出した。
ブラジリア時間10日13時30分に行われた就任式には、ジウマ大統領ら周辺国首脳が参列。黒のドレスを身に纏い、感極まって涙しながら就任演説と宣誓を行ったクリスチーナ大統領は、民政復帰後最高の支持率をもって、第2期政権をスタートさせた。
2001年当時、経済的には崩壊状態だったアルゼンチンにとり、経済を立て直し、雇用拡大に努めた、夫で前任の故ネストル・キルチネル氏の功績は忘れ難い。夫を失った後の同情票が集まったともいわれたクリスチーナ氏は、宣誓でも「神と祖国と彼(故ネストル氏)が私に命ずるでしょう」と語るなど、亡き夫を神格化した。
「多くの国民の支持を得、再び大統領の任に就くことが許された幸いを覚えるものの、何かが足りず誰かが欠けている」と語るクリスチーナ氏は、今は亡きネストル氏に言及する事で自らの求心力を強化しようとしたようだ。
就任演説では、1976〜83年の軍政時代の人権問題解決を強く打ち出し、70年代の闘争に触れた際は、ラプラタで死亡した反体制派女性闘士の事と共に、若き日の取調べ中の写真が4日付エスタード紙に掲載されたジウマ大統領にも言及しという。
また、最大の課題は経済だが、2001年の債務危機から立ち直った同国を新生アルゼンチンと賞賛。労働組合と距離を置き、企業家に接近中との評価がある中、企業家のためにではなく「4千万人の国民のため」に働くと強調した。
副大統領は第1期政権で経済・財政相を担当したアマド・ブドゥー氏だが、大統領のたすきが、就任式に出席していたアマド氏からではなく、娘のフロレンシアさんから手渡された事は、正副大統領の間に亀裂が生じた証拠と見られている。
大統領選の支持率は前回を9%ポイント上回る54・1%で、国会では連立与党が定数を9議席上回る135議席を獲得。24県の知事も与党19人、協力関係にある知事3人で、国政でも地方でも圧倒的に有利な状態でのスタートだ。
ただ、今年の経済成長見通し7・5%に対し、来年の予想は3・8%。最大の貿易相手国であるブラジル経済が欧州経済危機の影響で冷え込んでいる事が、同国経済にも顕著な影響を与えている。また、公式インフレ指数は9%だが実質インフレは25%というのも、雇用促進と経済安定が最大の課題とされる所以だ。