クラコランジアは17州都に29=クラック利用拡大の証拠=息子探す母を手伝う常用者=「探してくれ」の叫び聴く
ニッケイ新聞 2011年12月15日付け
全国的なクラック(麻薬の一種)使用拡大を受け、連邦政府が8日に麻薬常用者救済計画を発表した事は記憶に新しいが、クラック常用者が集中する地区(クラコランジア)は全国17州都に29カ所ありと11日付エスタード紙が報じた。
クラックを常用し始めると急に痩せたり家の中のものを持ち出したりという兆候があり、9日付エスタード紙表紙の写真に6カ月前失踪した息子の姿を認めて息が止る思いをしたというファッチマさんも、服や宝石がなくなり、警察に捜査を依頼した時から息子が姿を消したと証言している。
息子を探すため、家にいた頃の写真とエスタード紙の写真を手にクラコランジアに赴いたファッチマさんが見たのは、少しでも金になるものはないかとゴミをあさる若者や道に座り込み目もうつろな人々の姿。「こんなに沢山の人がいるんだ」と驚きつつ息子を探す母を手伝ってくれたのはクラックの常用者達で、息子や娘を失い、悲しみに胸がつぶれる思いをしている母は無数にいる事も実感したという。
常用者救済の鍵は心を通わせ、信頼を得る事と現場の専門家はいうが、自分も探し出してくれと願っている常用者の思いに触れたファッチマさんは、息子を連れ帰るまでは探すのを諦めないと改めて心に誓っている。
ファッチマさんが訪れたサンパウロ市のクラコランジアは1980年代からクラック常用者が居つく場所だが、政府の麻薬中毒者救済計画発表後のエスタード紙報道は、サンパウロ市のクラコランジアは常用者が集中する場所の一つに過ぎないという実態を改めて浮き彫りにした。
大麻やコカインより廉価で手に入れやすく、使い始めると常用化しやすいクラックは、市街地でも貧しい地区に常用者が集中し、サンパウロ市ルス地区、リオ市ジャカレジーニョのようなクラコランジアを形成する。
また、サンパウロ市にはクラック常用者が100人以上集まる場所は最低5カ所あり、〃クラコランジア〃の言葉がルス区の一角を表すか否か、注意を払う必要も生じている。
サンパウロ市のクラック常用者が別の地区にも広がったのは、カサビ市長が打ち出した〃ノヴァ・ルス計画〃などで、セントロに居辛くなった路上生活者や麻薬常用者がパウリスタやピニェイロスなどに移動した事に起因。サンパウロ市も強制入院を含む対策を導入したが、思ったほどの効果は出ていない。
全国のクラコランジアは大小5千を超えると見られ、北伯のものは小規模だが動きが大。北東伯では場所毎に様子が異なり、サルバドールのクラコランジアは南東伯並みだが、レシフェでは小さいものと大きいものが混在するという。南伯のポルト・アレグレ、フロリアノポリスのクラコランジアは中規模。南東伯のサンパウロ市、リオ、ベロ・オリゾンテは広い範囲に常用者が広がるのが特徴。ブラジリアも最低五つのクラコランジアがある。