ニッケイ新聞 2011年12月15日付け
【サンジョアキン発=田中詩穂記者】日系初の本格的ワイン生産が〃リンゴの里〃サンジョアキン市で始まっている。サンタカタリーナ州都フロリアノーポリス市から南西に約200キロの同市にある、サンジョアキン農業協同組合(SANJO、清水信良理事長)では近年、ワインの本格生産が始まり、さっそく欧州のコンクールで入賞するなど高い評価を得ている。現地を訪れ、関係者に取材した。
00年頃、同市の農業試験場でワインの専門家が「ここで良いワイン作りができる」と判断したことをきっかけに、苗をフランスから輸入し、ブドウ栽培が始まった。
組合員のうち二世が中心となり20人がワインの生産会社を設立。畑面積は約25ヘクタールに上る。
標高最低1千メートルの地での栽培を厳守し、カべルネ、ソーヴィニョン・ブラン、シャルドネ(収穫量順)を栽培、年間8万リットルを生産している。製造には2600平米の加工・醸造所を設置し、チリ、イタリア、フランスなどから最新式の設備を導入した。
ブラジルで最も多くワインを生産しているのが南大河州セーラ・ガウーシャ地方だが、畑の標高は1千メートルに満たないという。清水理事長は「十分に熟れるので、糖分が高くなり砂糖を混ぜる必要がなくなる」と強調する。
07年に初めて市場で販売された2010年のソーヴィニョン・ブラン(白)「Nubio」は、ブリュッセル国際ワインコンクールのブラジル産ワイン部門で最高金賞を受賞。出品された全種類450点のうち、最良の5本に選ばれた。
さらに今年は、2種のスパークリングワイン(シャンパン)が完成。ブドウの代わりにリンゴを醸造したスパークリング酒も作られており、ほんのりとリンゴ風味が残る、香りも良い一品だ。
また08年のコンクールで金賞を受賞したシャルドネとソーヴィニョン・ブラン(白)「Maestrale Integraus」は卸値段79レアルだが、同組合サンパウロ事務所の平延渉さん(68、広島)は、「400レアルのフランスワインと同水準」と太鼓判を捺す。ワイン専門家お墨付きだといい、今月12日に追加で2千本が解禁となった。
白ワインの場合は収穫した年に販売されるが、赤ワインの場合は樽で十数カ月、瓶に入れた後は4〜5年間横にして寝かせ、渋味を取る必要があるなど、生産には手間がかかる。
業界に参入してから日が浅いため、流通はこれからだ。組合関係者は「投資した分の見返りがまだないし、高級品としてブランド化しているので販売も難しい」と口を揃える。
日系農協としては初の試みで、「ワインといえばヨーロッパ人が作るもの。極めて難しい業界に参入したことになるが、日系の組合から生まれたワインとして、まずはコロニアに知ってもらいたい」と平延さん。問い合わせや購入希望は平延さん(電話=11・3834・1827)まで。