ニッケイ新聞 2011年12月16日付け
2014年のワールドカップ開催に伴う工事を理由に、国内では少なくとも21の地域で不法な強制立ち退きが行われていると13日付エスタード紙が報じている。
不法立ち退きが行われていると見られているのは、サンパウロ市、リオデジャネイロ、ベロ・オリゾンテ、クリチーバ、フォルタレーザ、ポルト・アレグレ、レシフェなどで、社会運動団体統括組織の大衆委員全国連絡会によると、この不法立ち退きにより17万人が住居を失う可能性があるという。
こうした問題の解決策として、同委員会は12日に、「大イベントとそれに伴う人権侵害」と銘打った138ページに渡る文書をW杯開催の12都市で公表した。これは16年のリオ五輪の際にも適用されるという。
連絡会コーディネーターでもあるリオ連邦大学(UFRJ)のカルロス・ヴァイネル教授は、問題となる地域はもっと多いからこの文書は「参考程度にすぎない」とした上で、「もっと多くの国民に、W杯の名のもとに何が行われているかを知ってもらわなければならない」と語っている。
サンパウロ市のカサビ市長もこの文書を受け取ったが、サンパウロ市では、イタケロンの新スタジアムとクンビカ空港を繋ぐ経路確保のためのチエテ川沿岸公園やジャク・ペッセゴ道、北部環状線の工事のための立ち退き対象が1万5千世帯以上。建設のための相談もその後の転居先も示されないまま立ち退かされた家族も4千以上と見られている。
また、リオデジャネイロの港湾地帯にあるプロヴィデンシアの丘でも今年の7月から立ち退き問題が起きており、「立ち退き料として400レアルを提示されたが、その金額ではどこも借りられない」と住人は怒りを露にしている。