ニッケイ新聞 2011年12月17日付け
2005年12月16日に亡くなった俳人の富重かずまさん(本名計馬、享年85)を偲ぶ『第6回かずま忌俳句大会』が11日に文協会議室で開催された。生前かずまさんが主宰した俳誌「蜂鳥」(富重久子主宰)の誌友50人が参加した。妻久子さんの特選(かずま賞)には滝谷文子さん(75、埼玉)の「椰子の花風のまゞしおたれて」が選ばれた。
かずまさんと東日本大震災の犠牲者への黙祷後、久子さんは「かずまが蜂鳥に込めた思いを継ぎ、俳句の教えの灯火を消すことなく繋いでいきたい」とあいさつで決意を語った。
兼題は「かずま忌」「風鈴」「椰子の花」「年末一切」。かずまさんの遺影が見守るなか、参加者は自らの句帳から厳選した5句を短冊に書き付けた。
清書した句を回覧し、「この言葉は初めて見る」「詠んだ風景が分かるね」などと隣の人と話しながら250句とにらめっこ。昼食をはさみ、それぞれが気に入った5句を選んだ。
参加者による一般選と9人の選者の代表選10句(うち特選、次点各1句)が披講、トメアスーやブラジリアなど、遠方のため参加できなかった22人から送られてきた俳句もあわせて詠まれた。
かずま賞を受賞した滝谷文子さん(75、埼玉)=コチア市在住=は、長年短歌を続けており、俳句大会は初参加。 「隣家の庭に咲いた花を毎日見て詠みました。まさかのことで驚いています」と笑顔を見せた。久子さんは「すばらしい写生句」と評価した。
「まさかの結果で信じられない」と話すのは、総合点1位となった松井明子さん(83、島根)=サンパウロ市=。蜂鳥誌友会代表でもある。
「句会に入り25年、かずまさんには『ありのままを詠みなさい』と教わってきた。今後も久子さんと二人三脚で句会を続けていきたい」と微笑んだ。
各選者の特選と総合点順位は次の通り。
【富重久子選】「椰子の花風のふくまゝしおたれて」(滝谷文子)、【水野昌之選】「百八の鐘の音消す除夜花火」(森川玲子)【伊那宏選】「蜂鳥の自在な飛翔かずまの忌」(馬場園カネ)【浜田一穴選】「風鈴の息ひそめいる真昼かな」(松井明子)【池田童夢選】コドルナが売られてゐるよ椰子の花(串間いつえ)【西朋子選】この道を真っ直ぐ行こう椰子の花(松井明子)【湯田南山子選】相聞歌繙き励むかずまの忌(平間浩二)【佐藤孝子選】サビアはた啼くは挽歌やかずまの忌(広田ユキ)【広田ユキ選】「かずま忌や遺影にそよぐばらの風」(田中美智子)▼総合1位=松井明子(19点)、2位=木村都由子(14点)、3位=黒柳道子(13点)。