ニッケイ新聞 2011年12月21日付け
最高裁のマルコ・アウレリオ判事が19日、裁判官に対する国家法務審議会(CNJ)の権限を制限する暫定令を出し、不正疑惑が生じた裁判官の捜査は各州の裁判所に設けた監査委員会が行うべきとの見解を明らかにしたと20日付伯字紙が報じた。
国家法務審議会が創設されたのは2005年。司法権を行使する裁判所を外から監査し、独走や暴走を抑制する目的で設けられた機関は、最高裁長官や高等裁判事らの裁判官の他、検察庁や全国弁護士会のメンバーなど15人で構成される。
CNJの委員長はセザル・ペルゾ最高裁長官が務めているが、ペルゾ長官の感情を逆なでするような「法服を着た悪人がいる」発言が飛び出したのは9月の事だ。
発言者はCNJのメンバーで高等裁判事でもあるエリアナ・カルモン国家監査官で、サンパウロ新聞協会に、裁判所の一部で不正が行われている事を示す発言をした事が9月28日付フォーリャ紙で報じられた。
ペルゾ長官は直ちにCNJの会合を開き、「判事達の能力や素質、適応性を疑い、司法制度そのものを侮辱している」との文書を発行したが、今回のM・アウレリオ判事の暫定令は、裁判官に不正疑惑が生じた場合にCNJが独自捜査を始める事を禁止。各裁判官が所属する裁判所の内部監査(州管轄)で不正が判明し、CNJに処遇を決めるよう求めてきた場合などに限って捜査権を持つよう規制した。
同暫定令により、裁判所内での不正審議は140日以内に行い、裁判所長と監査官も加わるなどのCNJによる規定も効力を失うため、裁判官らの不正審議にある、長引く内にうやむやになるという身内裁判の特徴復活の可能性が高くなる。
裁判官を巡る疑惑の一つは急速に資産を増やした裁判官や家族がいる事で、CNJはサンパウロ州など22カ所を捜査する予定だが、最初に捜査を始めたサンパウロ州ではリカルド・レワンドスキ判事が19日、捜査目的が明確でないとして、裁判官への給与支払い明細調査を停止させた。この判断も他の疑惑捜査に影響しそうだ。
CNJの権限を制限する暫定令は最高裁の全体審議を経て正式発効となるが、最高裁は2月まで休廷となるため、当面は暫定令による規制効果が継続。カルモン監査官は休暇入り前日の暫定令に驚きつつ、「司法担当者かつ国民の一人として、CNJが自治権を持つべきとの考えは変わらない」と発言している。
19日はローザ・マリア・ウェベル・カンジト氏の最高裁判事就任式も行われたが、暫定令を不服とするルイス・イナシオ・アダムス国家総弁護庁長官は今週中にも上告する意向だ。ただ、最高裁は休廷のため、不正疑惑の裁判官達は、2月の審議再開まで、しばしの間、枕を高くして寝られる事になるだろう。