ニッケイ新聞 2011年12月27日付け
今年もあと少しで終わる。この1年を振り返ると短いようでもあり長くもあった。ただ日本では東日本大震災と福島原発事故があり、人々は哀しみに沈み今も政府と県は復興を目指し全力を挙げている。岩手、宮城、福島の沿岸には津波が襲来し2万人もが死亡・不明となる歴史的な惨事だったが、それでも被災者らは力強く立ち上がり、大津波にも耐えるような堅固な街造りを目指しているのは喜ばしい▼原発の安全神話は脆くも崩れ、付近の住民は遠隔地へ避難し農業への影響も大きい。そして—原発の廃炉には40年も掛かる気の遠くなるような話が起こり—「脱原発」の議論までが展開される。目を世界に向ければ、北アフリカに始まった「アラブの春」は、あの周辺の国々に波及し、エジプトの政権も倒れ、リビアの専制国家も崩壊しカダフィ大佐は、年端もゆかない少年に銃殺されという結末に終わった▼ギリシャに端を発する欧州危機は、国際経済にも影響し、驚異的な円高となり日本政府が強力な為替介入を実施したが、ヨーロッパのこうした財政危機は収束の見通しも立っていない。イタリアもだしポルトガルなども破綻に近く、独仏やIMFの金融支援だけでは解決しそうにもないのが実態ではないか▼唯一つ。9年も続いたイラク戦争が終結したのは評価したい。独裁者のフセイン大統領は処刑され、イラクが民主化へと歩みだしたのはやはり大きい。勿論、反政府派もおり、治安やイランとの関係など不安定な要素が残るが、これもアメリカの協力で乗り切るだろうし、将来への夢は膨らむと大いなる期待を寄せている。(遯)