ホーム | 特集 | 新年特集号 | 2012年新年号 | リンゴの里で本格ワイン生産=サンジョアキン農協の新機軸

リンゴの里で本格ワイン生産=サンジョアキン農協の新機軸

新年特集号

ニッケイ新聞 2012年1月1日付け

 サンタカタリーナ州の州都フロリアノーポリス市から南西に約200キロに位置し、〃リンゴの里〃として知られるサンジョアキン市にあるSANJO(サンジョアキン農業協同組合、清水信良理事長)では近年、ワインの本格生産が始まっている。国内で最も寒さが厳しいとされる、セーラ・カタリネンセの恵まれた気候の下で作られる芳香なワインはまだあまり市場に流通していないものの、欧州のコンクールで入賞するなど高評価を得ている。一方、今年から生産販売を始めたリンゴジュースは関係者の予想を越えた反響を呼んでいる。品質、選別、冷蔵管理ともに業界トップを誇り、優良品として最高の価格帯で取引されているリンゴを販売するSANJOの、新たな取り組みを取材した。

 高品質ワインは欧州で金賞に輝く=「国内産でトップクラス」

 SANJOが昨今力を入れているのがワイン作りだ。
 生産管理責任者のオラーヴォ・ガヴィオリ工場長(32)は、ドイツで食品の品評会、見本市に参加し、ワインとジュースの生産を勉強したといい、「最高のワイン作りの条件を組合が与えてくれている。ブラジルの国内産ワインとしてはトップクラスの品質。味には絶対の自信があります」と胸を張る。
 「ここでのワイン用ブドウ作りで一番良いのは標高。日中と夜の気温差が大きいのも良い条件」とガヴィオリさん。生育期間が通常より長く収穫時期が遅いため、成熟が緩やかに進み、まろやかで良質なブドウに育つという。
 2000年頃、同市の農業試験場でワインの専門家が「ここで良いワイン作りができる」と判断したことを契機に、苗をフランスから取り入れ、カベルネ・ソーヴィニョンの栽培が始まった。
 組合員のうち二世が中心となり20人がワインの生産会社を設立。畑面積は約25ヘクタールに上る。
 標高最低1千メートルの地での栽培を厳守し、年間8万リットルを生産している。製造には2600平米の加工・醸造場を設置し、チリ、イタリア、フランスなどから最新式の装備を導入した。
 銘柄はMaestrale、Nubio、Nobreseの3つで、赤、白、ロゼの3種。
 07年に初めて市場で販売され、2010年のソーヴィニョン・ブラン(白)「Nubio」は、ブリュッセル国際ワインコンクールのブラジル産ワイン部門で最高金賞を受賞。出品された全種類450点のうち、最良の5本に選ばれた。試飲してみると、後味すっきりで魚料理に良く合いそうだ。
 同コンクールで金賞を受賞した08年のカベルネ(ロゼ)「Nubio」は、少し渋味があるがさわやかで、味の濃い料理と相性が良さそう。
 さらに今年は、2種のスパークリングワイン(シャンパン)が完成。ブドウの代わりにリンゴを醸造したスパークリング酒も作られている。これも試飲してみると、ほんの少しリンゴの風味があり、香りも良い。
 また08年のコンクールで金賞を受賞したシャルドネとソーヴィニョン・ブラン(白)「Maestrale Integraus」は卸値段79レアル。同組合サンパウロ事務所の平延渉さん(68、広島)曰く、「400レアルのフランスワインと同程度」で、ワイン専門家お墨付きだという。
 同市ではSANJOより先に2箇所でワインが生産されているものの、日系農協としては初。「日系の組合から生まれたワインとして、まずはコロニアに知ってもらいたい」と平延さん。問いわせや購入希望は平延さん(電話=11・3834・1827)まで。