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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年1月6日付け

 昨年末に聖南西文化体育連盟(UCES)の会合を取材したおり、日本語教育の話になった。最盛期には地区内には22校も日語学校があったが、現在は12校と半減した。例えばサンミゲル・アルカンジョ日語学校にはかつて200人も生徒がいたが、今では20人だという▼人数が減るのは残念だが、教育の内容に関しては今からでも手を加えることはできる。日本語教育にはもっと移民史の授業があってもいいと常々思ってきた▼当地の「国語」がポ語であるのは当然だが、日系アイデンティティや日系社会の将来を考えたとき、未来の世代が先祖の歴史を知らないことはルーツを失うことだ。たとえ混血が進んでも、日系意識、ブラジルに渡ってきた初代への敬意、先駆者の歴史への関心が持続すれば、日系社会は維持される。日語学校で移民史の授業をしてもらうことは、今できる最も大きな日系意識の継承事業だろう▼ピラール日本語学校などでは実際に移民史をテーマにした授業がある。百年間の移民史の概要を伝えることは、日系児童のアイデンティティ形成には不可欠ではないか▼百年祭前には移民史料館を中心に子供向け移民史絵本のプロジェクトがあったが立ち消えになってしまった。本当に残念なことだ。今こそ日本語センターなど関係機関が力を合わせ、子供向けの移民史教科書を作り、無料で学校に配布したらどうか。ポ語で解説した副読本があればもっといい▼百周年が終わったと息を抜いている閑はない。「天気が好い時に屋根を直せ」と言うが、次の百五十周年に向けた取り組みをもう真剣に考えなくてはいけない。(深)