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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年1月7日付け

 今の日本は大グルメが世に満ち溢れ世界の国々の美味があり、仏のレストランの味を格付けする企業までが進出し東京などの番付を発表するなど眞に賑々しい。勿論、ブラジルのシュラスコもあるし、パリやイタリアの料理店もある。そして冷え込みの厳しい睦月ともなれば、鮨やには惚れ惚れとする真紅の赤身や大トロが綺麗に並ぶ▼鮪が1番美味いのは雪が降り北風の冷たい冬であり、東北の仙台辺りでは「シビ」と呼び大変なご馳走だったし、若い者は赤身を土佐醤油に漬けたのを丼飯に乗せて二杯、三杯と胃の腑に流し込んだものだ。この鮪も江戸の握り鮨には、あまり評判がよくなく、ほとんど使われなかったそうだ。あの時代には冷凍技術もないし、新鮮な魚の入手も難しかったせいだろうが、それにしても、今のトロ嗜好はちょっと異常な気もする▼日本人の魚好きは昔からのことだし、鮪の消費量も世界一。これも1960年代に冷凍技術が急速に進み零下50〜60度にまで下げ鮪を急速に冷やすと鮮魚と変わらなくなったかであり、今、東京に入荷するのは地中海のスペインやイタリアに始りアメリカといろんな国から輸入されている。だが、やはりホンマグロの美味いのは青森県大間町のものであり、これは確か1本釣りである▼この大間町沖の鮪1本(269キロ)が、なんと5649万円と聞けば—もう驚くしかない。1キロ当たり21万円だから—とても丼飯ともいかぬ。東京・築地の初競りで落札したのは鮨やだけれども、それにしてもこの高値にポンと応ずる度胸が凄い。あーマグロ。幻のマグロである。(遯)