ニッケイ新聞 2012年1月12日付け
3日からサンパウロ市ではじまったクラコランジアでの取締りについて、州検察局が10日、やり方に疑問があり捜査を開始すると発表した。11日付伯字紙が報じている。
今回の捜査の目的は二つあり、ひとつは市や州政府が推奨する、常用者に痛みや苦しみを与えることによって麻薬を断たせるという方法の根拠を知ること。検察側は「常用者たちは人生を通して痛みや苦しみをすでに十分体験しているのではないか」と、そのやり方に疑問を呈している。
また、もうひとつは、常用者たちをサンパウロ市に拡散させる原因となった、ゴム弾などを使った軍警の強権的な行動の実態を把握することで、「現状のやり方では、常用者たちと、助けの手を差し伸べようとする社会との間に断絶を生むだけだ」と検察官は語っている。
またエドゥアルド・フェレイラ・ヴァレーリオ検事は、「常用者センター開館まであと30日という段階で、州政府が暴力的な取締りを開始したことを正当化する理由はない」と、軍警の見切り発車を批判した。
これに対し、州保安局のアントニオ・フェレイラ・ピント局長は「軍警の取締りは早まった行動などではない」とし、実際に効果をあげていると主張。検察側の姿勢を「日和見主義的で、これでは運び屋の思うツボ」だと非難した。
だが、それと同時に、ピント氏は軍警に催涙ガス弾やゴム弾の使用を禁じ、最悪の場合でもマスタードガス使用に止めるよう命じた。これは7日夜から明け方にかけて、軍警が約100人の常用者にゴム弾を浴びせたとの9日付フォーリャ紙の報道を受けての決定だという。この件は10日に行われた検察局での会議でも中心議題となり、地裁判事のアントニオ・カルロス・マリェイロス氏は、軍警に反抗する健康状態にはない常用者への武器使用は認められないと語っている。
一方、リオ・デ・ジャネイロ市は、12月に発表された連邦政府主導のクラック対策導入の第1号となる見通しだ。このほどリオ市警の麻薬対策局長に就任したヴァレリア・デ・アラゴン・サージオ氏は、就任前から国の麻薬対策プランを州に導入するための会議にも出席している。リオでは市警と連警の協力体制や医療チームとの関係調整も含めた準備が進んでおり、「クラック常用者は警察の管轄ではなく、取締りに武器を用いることはない」と語っている。