ニッケイ新聞 2012年1月18日付け
アラゴアス州都マセイオーで16日に始まった陪審裁判が、州民の注目を集めている。〃グルッタの大量殺人〃として全国に知られたセシ・クーニャ下議夫妻と親族2人殺害という事件の容疑者5人の裁判は、事件から実に13年を経て始められた。
事件が起きたのは、1998年12月16日。同年の選挙で再選し、認証の喜びも冷めやらないクーニャ下議夫妻が、妹夫婦らと歓談していた時に悲劇が起きた。
裁判初日の16日に証言台に立ったのは、事件の生き残りでクーニャ下議の妹のクラウディネッテ・S・マラニョンさんだ。姉夫婦や自分の夫、姑と共にベランダで歓談していた時、2人の賊が侵入し銃を乱射。急いで屋内に身を潜めたクラウディネッテさんは助かったが、姉夫婦と夫、姑は凶弾に倒れ、賊は車で逃走したという。
ジャディエルソン・バルボーザ・ダ・シウヴァ容疑者が実行犯の1人と証言したクラウディネッテさんは、「こいつが例の下議だぜ」という会話も耳にしている。
また、続いて証言台に立った退役軍警は、別の下議の殺害を依頼されたが、情報が漏れたため計画は中止されたと証言。最初の計画がダメになったため狙われたのがクーニャ下議で、通称シャペウ・デ・コウロ(皮帽子)と呼ばれる男を通して殺害を依頼してきたのは、事件のおかげで下議に繰上げ当選となったタウバネ・アウブケルケ・ネット容疑者と見られている。
初日の証言者は検察と弁護双方から計8人で、17日は朝から実行犯と見られる容疑者2人と依頼者と見られるネット容疑者の尋問。その後は検察官と弁護士が互いに論陣を張る展開となる。
17日付伯字紙などによると、裁判は20日までに結審の見込み。下議の妹で弁護士のクレイア・オリヴェイラさんや息子で弁護士のロドリーゴ・クーニャさんらは、週末の14、15日に海岸で裁判開始を知らせるビラを配布。16日も、殺害当日クーニャ下議が持っていたのと同じ白いマーガレットを配り、正当な裁判が行われるよう支援を求めた。
当時17歳だったロドリーゴさんは、普段は電話などしてこない人達が次々に「大丈夫か」と尋ねてきた事や、両親と連絡を取ろうとしたが取れなかった事、同様の電話を受けた妹と2人で両親の消息を尋ね回り、タクシー運転手から事件の事を聞いて妹と共に泣き崩れた事などを今も鮮明に思い出す。
殺人事件などの裁判が長引き、うやむやになる事も多い実態は米州機構でも問題視しているが、容疑者の1人が自分の大学に入学してきたため別の大学に移った、容疑者らが街中を平然と歩くのを見ていたたまれない気持ちになったといった過去が報われ、銃で解決という同州の慣習が変わる事をクーニャ下議の遺族や関係者は望んでいる。