ニッケイ新聞 2012年1月20日付け
世界銀行が2012年の全世界の経済見通しを下方修正し、経済不況はヨーロッパを超え、発展途上国やブラジルのような新興国にも及び、2008年同様の世界不況となる可能性が高いと注意を呼びかけた。19日付エスタード紙が報じている。
年2回行われる世界銀行の世界経済見通し発表が17日に北京で行われ、チーフ・エコノミストの林毅夫氏は「2008年9月に起こったような世界不況が現実に起きようとしている」と警鐘を鳴らした。
世界銀行による2012年の経済成長率は、発展途上国で5・4%、先進国ではわずか1・4%と予想され、昨年7月の6・2%、2・7%から大幅に下がった。これは先進国で資本の流れが悪化し、国が抱える負債が増えた影響が、昨年8月頃から発展途上国でも実感されるようになってきたためだ。開発プロジェクト主任のハンス・チマー氏は「昨年7月以降、証券市場は全世界のGDPの9・5%相当の資本を失った」と語っている。
ブラジルを含む新興国の12年の経済成長見通しは3・3%、13年は3・7%で、平均10%を達成した過去10年の実績を大きく下回る。貿易の拡大も前年の6・6%から4・7%に低下する見込みで、新興国も資金源の確保や公共支出の効率化などをはかり、世界的な経済不況に備えるよう注意を促した。
またブラジルに関しても状況は厳しい。それは、農産品や鉄鉱石を主要輸出物とするブラジルには、必需品(コモディティ)価格急落の影響が増幅されるからだ。チマー氏は「金属価格は昨年7月から10%下落し、状況は悪くなる一方」としている。だが同氏はブラジルがここ数年採択しているマクロ経済政策を評価し、ブラジルの経済成長予測は12年が3・4%、13年は4・4%としている。
これは17日に発表された国連の経済成長予測を上回っている。国連はブラジルの12年の経済成長率を2・7%と予想し、ヨーロッパ経済が回復ししなかった場合は、新興国で最低の0・5%としていた。国連が懸念するのはブラジルのインフレで、国を挙げた財政政策が必要だとしている。
ヨーロッパ経済は厳しさを増しており、IMF(国際通貨基金)は18日に、世界経済の再建のためにユーロ圏内に必要な資金は5000億米ドルであるとの見解を発表している。