ニッケイ新聞 2012年1月21日付け
中央銀行の通貨政策委員会(Copom)が18日、経済基本金利(Selic)を0・5%ポイント引き下げ、年10・5%にする事を決めたと19日付伯字紙が報じた。昨年8月に始まった基本金利の引き下げは4回連続で、3月か4月まで続くとの見方が一般的だ。
経済基本金利は、2010年末から引き上げが始まり、トンビニ総裁に代わった2011年も、7月には年12・50%まで引き上げられたが、8月以降は0・5%ポイントずつ引き下げられ、次回の委員会で年10%になるのは、半ば当然と見られている。
政府の金融政策と中銀の通貨政策は、景気とインフレをコントロールするための両輪で、インフレ高進時の金利引き上げは、ルーラ政権でも繰り返されていた。
だが、メイレーレス前総裁指揮下での基本金利引き上げは、成長志向のジウマ大統領(当時、官房長官)の意向とは相容れず、政権移譲時に中銀総裁を入れ替えたのも、成長政策促進のためと見られていた。
その意味で、景気減速の兆しが見えたものの、インフレがまだ高率だった昨年8月の基本金利引き下げは時期尚早との見方が強かったが、その後の欧州を中心とした世界経済の動きは、インフレ抑制以上に経済促進を重視せねばならない状況であった事を実証した。
昨年11月の委員会以降、米国の雇用増など、世界経済に僅かながらも改善の兆しが見え始め、減速化が始まったとされる国内景気も徐々に回復との声もあり、インフレ再燃を懸念する声も出始めたが、12カ月累計のインフレは下がり続けており、金利引き下げは3月か4月の委員会まで続くとの予想が出ていた事は12日付エスタード紙などが報じていた。
3月の金利引き下げについては委員会後の総裁発言からもほぼ確実で、現在の市場の関心は、その引き下げ幅と最終的にどこまで下がるか。
今後の金利の動向を左右するのは、連邦政府の支出動向と世界経済の動きで、世銀が世界不況への警告を鳴らす中、3月に10%、4月には9・5%に引き下げとの見方が強いようだが、その一方、今年後半からは再び引き上げが始まるとの声も高まっている。
連邦支出に関しては、ジウマ大統領が2012年の予算案を裁可し、20日付官報に掲載。総額2兆2570億レアルの内、負債返済などを除いた実質支出分は1兆4940億レアルで、負債書き換え費用などが6550億レアルというから、満期国債につく利息などが減る基本金利引き下げが、政府の負担減につながる事も確かだ。
中銀は今年のインフレは政府目標の4・5%以内に落ち着くというが、インフレ沈静化よりも世界経済の悪化を見込んだ基本金利引き下げという一部市場関係者の推測が本当なら、手放しで喜ぶ事は出来ない。