ニッケイ新聞 2012年1月24日付け
サンパウロ州サンジョゼ・ドス・カンポスで22日、軍警が武力行使により、倒産企業私有地に不法滞在していた人々を強制的に立ち退かせた。23日付伯字紙が報じている。
軍警は同日朝6時に市東部にあるピニェイリーニョ地区に着き、6時40分より強制立ち退きを開始した。6千人が住む地区の立ち退き作業は18時までに終わり、居住地の電力は切られ、家の解体作業もはじまった。
地区住民約5千人は私有地の外にある体育館に収容されたが、夜になって住人と軍警との小競り合いが激しくなり、軍警もゴム弾や催涙弾を使用して鎮圧を試みた。
住民は車8台や三つの建物に放火して抵抗し、16人が逮捕された。背中に実弾を受けた住民1人が入院したほか、軍警1人と市民警備隊1人、連邦政府派遣の係官1人を含む9人が負傷した。
04年2月からホームレスの人々の不法占拠が始まったのは、倒産した企業グループ、セレクタ所有の130万メートル平米の跡地だ。社会労働者連合党(PSTU)や社会運動家、金属労組の支援を受け、舗装道路に八つの教会、学校、公園もある地区住民は8割が車を持つほど。住民代表は、10年に連邦政府と州政府に同地での居住を合法化するよう訴えを起こしたが、州は市が都市プログラム(現在まで未実施)に利用する予定だと断っていた。
そして、先月末、州裁判所(地裁)が同地からの立ち退き命令を下し、住民側の120日間の立ち退き延期を求める訴えも11日に却下された。そのため、ピニェイリーニョの住民たちはヘルメットと木刀と即席の鎧などで武装して立ち退き反対を訴えていた。
だが、この強制立ち退きは同時に大きな波紋も投げかけている。この土地は連邦政府の市街化計画とも関係しており、連邦裁判所(高裁)は立ち退き停止を決めたが、この命令は立ち退き作業開始後に届き、高裁側は夜になって、立ち退きは地裁の判断によるものとの見解を発表した。
また、企業側と住民との間の合意成立を知る連邦政府は、同日朝立ち退きを知り、「突然のことに驚いた。無抵抗の家族への武器使用は避けるべきだったのではないか」との見解を示したが、アウキミン州知事についての言及は行わなかった。一方、労働者党のテイシェイラ下院議員は「この状況は避けえたはずなのに、混乱を引き起こした」として知事を批判した。知事は同日中は無言を保った。
また、サンパウロ市パウリスタ大通りでは同日夕、「ピニェイリーニョは住民たちのもの」との横断幕を子供を連れて逃げ出す住民抱えた人約500人が、道行く人たちに立ち退きに対する怒りを訴えた。