ニッケイ新聞 2012年1月28日付け
2011年の国外からのブラジルへの投資が急激に伸び、史上最高額を記録したが、経常収支の赤字も最悪値を記録した。25日付エスタード紙が報じている。
中央銀行が24日に発表した統計によると、2011年の外国直接投資(FDI)は667億米ドルで、当初予想していた450億ドルを48%上回った。これは2002年の約4倍で、リーマンショック後の国際的な経済危機をブラジルが諸外国よりも早く乗り越えた2010年の記録も塗り替える数字だ。
中央銀行経済部主任のトゥーリオ・マシエル氏は「諸外国のブラジル経済への信頼を物語るものだ」と語っている。また、エスピリトサント投資銀行の経済部長フラヴィオ・セラーノ氏は「現在、外国の多くの企業が自国の経済危機によるリスクを避けるために、ブラジルに生産投資をしている」と分析している。
しかし、このような諸外国からの人気はドル安レアル高や国外へのドル流出という状況を招くことにもつながり、貿易収支が298億ドルの黒字であったにも関わらず、経常収支は1947年以来最悪の526億米ドルの赤字を記録した。マシエル氏はこの現象もブラジルの経済の好調を示すもので、国外からの財やサービスへの需要が高まった結果としている。
例えば、ブラジルに進出した多国籍企業が国内で得た収益を母国に送る利益送金は、前年比25%増の381億米ドルで新記録を更新。鉄鉱や石油、天然ガスなどを採掘するための大型機械の賃借料も21%増の167億米ドルを記録した。
また、所得向上などで外国旅行者が増えたことを反映し、ブラジル人旅行者が国外で使った金は、前年比で29%増の212億米ドルで新記録。昨年8月からはドル安レアル高を消費者が警戒するようになったため、国外での消費額が落ち着きはじめたものの、外国からの旅行者が国内に落とした金との差額は145億ドルに達し、こちらも史上最大の赤字となった。
ただし、経常収支の赤字額が国内総生産(GDP)に占める割合は2・12%で、2010年の2・21%を下回った。
中央銀行によると、2012年の経常収支は650億米ドルの赤字で、FDIは500億米ドルに留まると予想されていることから、11年にはFDIから経常収支の赤字を差し引いても141億米ドルの黒字だったところが、150億米ドルの赤字となる。だがセラーノ氏は「150億米ドルの赤字は大きなものではない。私たちが危険とみなすのは赤字額が3500億米ドルを超えたときだ」と語っている。