ニッケイ新聞 2012年1月28日付け
先の民主党代表選で野田財務相(当時)は「ドジョウにはドジョウの持ち味がある。金魚のまねをしてもできない。泥臭く、国民のために汗をかいて働きたい」と演説したのがきっかけとなって「ドジョウ宰相」なる新語がはやっているらしいが、この「ドジョウの話」はある詩人からの借り物らしい。それはともかくとして野田さんとしては、首相になっても自民党や公明党とも話し合いで政治を進めたいの「低姿勢」を訴えたかったのに違いない▼松下政経塾から衆議になってからも毎朝、選挙区の駅頭の広場に立ち街頭演説をするのが日課の野田首相は、演説がうまい。ちょっと人さまからの引用が多いような気もするが、その昔は—政治家にとって演説は「命」であり、雄弁術を学ぶのに懸命だったのが昨今の国会議員には、聴衆を唸らせるほどに弁才豊かな方は極めて少ない。先の施政方針演説でも、消費増税法案で自公両党に協議を呼びかけたが、自民は拒否の姿勢を崩してはいない▼もう衆院本会議での論戦は始まっており、自民党の谷垣総裁と厳しい舌戦を繰り広げてはいるが、目下のところ「協調」の兆しは見えない。国家公務員の給与引き下げもあり、国会議員の削減と歳費の難問も抱えているし、首相にとってこの国会は文字通りの正念場である。自民党も、公約で「消費税10%の実現」を掲げたのだから—今になって民主党政権が実現を目指す「消費増税」に背を向けるのは如何なものか▼と、これは自民党の長老・森喜朗元首相の谷垣批判の意見でもあるのだが、こんな難局を乗り切り「消費増税法案」が成立するかどうか—である。(遯)