ニッケイ新聞 2012年2月1日付け
1月30日夜、キューバ共和国を初訪問したジウマ大統領は、キューバ外相やブルガリア大使の娘らの歓迎を受け、31日にフィデル・カストロ、ラウル・カストロの前、現国家評議会議長らと会見と31日付ブラジルメディアが報じた。
エスタード紙によれば、就任後初めて同国を公式訪問中のジウマ大統領は、5億2300万ドルの大型支援を約束するが、人道問題には触れない見込みだという。
30日夜、ハバナに到着したジウマ大統領を迎えたのは、ブルーノ・ロドリゲス・キューバ共和国外相。ユリなどをあつらえた花束を受取った大統領は、宿泊先のホテルでも、ブルガリア大使の娘であるイリナ・ニコロヴァさんら3人の青年からの歓迎を受けた。
1993〜2000年にブラジルにも住んでいたイリナさんに「今日知り合いになった2人目のブルガリア女性よ」と声をかけた大統領は、写真にも納まるサービス振りを見せたが、同じように接する事が許されていないのは反体制派の人々だ。
反体制派として投獄され、48日間ハンガーストライキ(抗議の断食)を続けた男性が1月19日に亡くなり、反体制派からは訪問中止を求める声も上がったが、外務省は、今回の訪問は同国の経済支援と貿易促進が目的で、人道問題には触れないとの姿勢を明らかにしていた。
ベネズエラへの依存度が極度に高い同国の経済発展を支援するためにブラジルが用意した5億2300万ドルは、6億8300万ドルをかけてのマリエル港改修工事と大型機械から食糧までの購入支援の一部。ブラジルからの支援額は、既に13億7千万ドルに達している。
両国間の貿易は2010年から2011年に31%増大し、総額6億4200万ドルとなっているが、キューバからの輸出は医療品を中心に9200万ドルのみ。ブラジルからの輸出品目は農業機械や靴、化粧品、カフェなどで、一時は砂糖まで輸出されていた。
大統領の訪問にあわせて発表されたのは、オデブレヒト社による製糖部門への投資で、外国の民間企業が同部門に参画するのは1959年の公社化以来初。10年で製糖工場の近代化と生産増大を計る事で合意を得た同社は、エタノール生産とそのための施設建設も計画している。
ルーラ前大統領は、同国訪問中の2010年2月にハンストで死亡した政治犯を「サンパウロやリオで捕まる賊と同じ」と評し、反体制派を失望させただけに、人道問題への関心を強く打ち出している大統領への期待は大きかったが、外務省は同国の人道問題は危機的状況ではないと評価。
大統領の動きは、表現の自由に関するドキュメンタリー封切りに合わせてブラジル訪問を希望する女性の出国許可をラウル議長に求めるなど、限られたもので終りそうだ。