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ロンドリーナ=移民の苦労を子供たちに=籾のモザイク画で歴史伝え=後藤さんと植田さんが展示=半身不随の苦労を乗り越えて

ニッケイ新聞 2012年2月4日付け

 少しでもブラジルを良い国に—。パラナ州ロンドリーナ市にあるリーガ・アリアンサ(パラナ日伯文化連合会)の会館で今月4日まで、色のついた籾を貼り付けて作るモザイク絵画展『Exposicao Mosaico de Arroz』が開かれた。同市とリーガ・アリアンサの共催。日本移民、ブラジルの歴史をもとにした58作品が展示された。制作にあたった同市在住の後藤英子(ひでこ)さん(68、三世)、植田安晴(やすはる)さん(74、二世)の「移民の苦労を、コロニアやブラジルの子供たちに伝えたい」との思いが込もった温かみにあふれた作品が並んだ。

 このモザイク絵画が生まれたのは日本で、発祥は約半世紀前だという。約40年前、白血病を患い左半身不随となった後藤さんが偶然手にした日本の雑誌で、農家の女性が、豊作で余った籾でつくるという記事を読み、興味を持った。
 医者にも治らないと言われて絶望していた。絵も描いていたし、体の痛みを忘れたくて始めた」
 一枚の絵に約1万5千粒の米が使用され、一粒一粒着色する。下絵に、特殊な技術で一つひとつ貼り付けていく。丸一日作業しても、完成まで平均10日ほどかかるという。
 知人の植田さんも関心を持ち、共に制作活動を始めた。
 2007年、翌年の移民百周年に日本移民をテーマにした作品を展示することを植田さんが思いつき、世間の反応を見ようと開いた個展の好反応ぶりに確信を得た2人は、活動を開始。
 金城ロベルト同市議ら18人の協力を得て、笠戸丸など移民船、当時の農園、住居、日系団体の会館、福祉施設、公園、日本館などをモチーフにした作品26点を制作した。
 細部にもこだわり、出港時の5色のテープが何色だったかを移民に聞いた後藤さんは「テープが切れたとき涙がこぼれたと聞き感慨深かった」と話す。
 サンパウロ州リンス出身の植田さんは「多くが自分の記憶。こういうパルミットの木の家に私も住んだ」と作品を説明する。
 作品は08年6月に同市であった百周年行事で展示され、「5日間、会場の外まで列ができるほど賑わった」と2人は語る。
 翌年から、ブラジルの歴史をテーマした作品作りに取り掛かった。「ブラジルは移民の国。苦労したのは日本移民だけでなくヨーロッパ移民も同じ。絵を通じて子供たちに伝えたいと思った」(後藤さん)
 約1年半かけて、カブラルやトメ・デ・ソウザなど重要な人物、サトウキビ畑で働く奴隷やインディオ、金で栄えたミナスの様子、ブラジリア建設などをモチーフに32作品を作り上げた。
 昨年、市内の学校で展示した。「ただ絵を眺めるだけではなく、一つ一つの意味を説明することが重要。説明を聞いて涙を流した少女もいた」と植田さんは話し、後藤さんが「少しでもこの国をよくしたい。『あなた達次第で国の将来が決まるのよ』と話すんです」と力を込める。
 作品は現在、同市とマリンガでしか公開されていない。2人は「コロニアの方はもちろん、各地で個展を開いて広くブラジル人にも見てもらいたい」と話しており、展示会開催に関心のある人に呼びかけている。連絡は後藤さん(43・3357・1361)まで。