ニッケイ新聞 2012年2月9日付け
市長・市議選を前にルーラ前大統領の動きがますます活発になってきた。8日付エスタード紙によると、フェルナンド・ハダジ氏への支援とメンサロン事件の裁判が選挙に影響するのを避けるため、下院リーダーにサンパウロ州のジウマル・タット下議を推し、マルタ氏取り込みも指示するなど、着々とサンパウロ市攻略を進めているようだ。
マルタ氏は知名度も高いが拒絶度も高い—。元サンパウロ市長で上院副議長も務めるベテランの出馬を止め、サンパウロ市での知名度は低いハダジ氏を党公認の候補に仕立てたルーラ前大統領が、サンパウロ市奪還への動きを加速化している。
労働者党(PT)名誉総裁で、現在も選挙戦ではジウマ大統領以上の影響力を持つと見られているルーラ氏が取っている方策は実に様々。
ハダジ氏の教育相退任と後任閣僚の就任式に出席して大喝采を浴びた事は記憶に新しいが、下院リーダーに、メンサロン事件関係者でもあるセアラ選出のジョゼ・ギマラエンス下議ではなく、サンパウロ州のタット氏を据えさせたのも方策の一つだ。
その他にも、カサビサンパウロ市長が立ち上げた民主社会党(PSD)との共闘を検討させると共に、副議長職持ち回り問題で党内から批判が出ていたマルタ氏に副議長を継続させつつ、マルタ市政時の局長らを使い、ハダジ氏の応援に早く加われと働きかけさせている。
PSDの共闘については、カサビ市政への評価が低迷し、市長が推薦する候補には投票しないという人も多い上、現市政では対立する立場だった両者が協力する事に抵抗を感じる党員もいる。
ところが、PTがPSDとの協力が吉と出るか凶と出るかを確かめるため今週中に調査の予定と5日付フォーリャ紙が報じた翌日、サンパウロ市での得票率を高めるにはエリート票の取り込みが必要だから、PT首脳がPSDとの協力を模索中とエスタード紙が報じた。
中央やエリートと、従来からの得票田である市周辺部の支持を失いたくない現場党員の意識の差はまだあるが、カサビ市長がルーラ研究所に土地提供という法案提出でPTサンパウロ市議の態度はかなり軟化している。
サンパウロ州内でも両党の共闘が予想される市増加との記事は6日付フォーリャ紙だが、一連の動きにあせっているのは社会民主党(PSDB)のアウキミンサンパウロ州知事だ。
5日夜、民主党(DEM)関係者の前でDEMはPSDBの盟友と持ち上げると共に、セーラ前知事に出馬を呼びかけPSDとの関係維持を探っていると口にした事は、サンパウロ市長選を目指すリカルド・トリポリ下議やアンドレア・マタラゾ文化局長、アニーバル・エネルギー局長、ブルーノ・コーバス環境局長の面々を刺激。セーラ氏出馬は自分達との党内予備選が条件との声も出ている。