最高裁=家庭内暴力防止に新判断=第3者の告発で起訴可=6人に1人の女性が被害=性に基づく差別にも警鐘
ニッケイ新聞 2012年2月11日付け
最高裁が9日、家庭内暴力で被害を受けた女性が届け出なくても、検察が加害者を起訴する事を認める判断を下したと10日付伯字紙が報じた。これにより、女性保護のためのマリア・ダ・ペーニャ法が発効となった2006年以降も家庭内暴力が絶えず、加害者が罪に問われないという状況の改善が期待される。
ブラジル女性の6人に1人が家庭内暴力の被害者で、加害者の9割は夫や伴侶—。家庭内の出来事は表面化しづらいが、家庭内暴力の場合は特に、被害者が届けを出さない例や訴えを取り消したりする例が多い。
こんな現状に終止符を打つためには、家庭内での暴力沙汰も白日の下にさらし、加害者が夫や伴侶であっても懲罰の対象となる事を明らかにする必要があるが、これまでは、被害者である女性が訴えて出ない限り、裁判に至る事はなかった。
ところが、今回の判決は、検察が起訴に持ち込むためには、被害者女性のみではなく、隣人や親戚などの証言があれば充分で、親族からの圧力や恐怖心、婚姻関係や扶養者を失いたくないといった理由で起訴を取り下げた時も裁判が継続される事になった。
セーザル・ペルゾ長官は、一度起訴に至った件は後戻りがきかないと知れば、女性や関係者が届け出る勇気を失う可能性もあるとして反対したが、最終的には10対1で可決された。
「本当にご主人を起訴するつもりですか」と聞かれれば、止めろと言われていると考える女性も多く、暴行がさらに繰り返されやすいのが家庭内暴力だが、女性保護法の名前にもなったマリア・ダ・ペーニャ・マイア・フェルナンデスさんは、結婚以来6年間、連日のように暴行され、1983年には銃で撃たれて下半身不随となった。
嫉妬深い夫はその後も感電させて溺れ死にさせようとしたため、勇を鼓して訴えたが、裁判は19年かかった上、8年の実刑判決を受けた夫は2年で牢から出てきた。
この事件は国際的にも知られ、米州機構(OAS)人権委員会に訴えられた時点で、男性が女性を殺害したり暴行を加えたりする事を防ぐべく制定されたのがこの女性保護法だ。06年以降、女性への暴行での起訴は33万件、9700人に有罪判決が下っている。
今回の審議では、「最高裁には女の判事もいるんだって?」と言われた経験があるカルメン・ルシア判事が、男性から女性への暴行以外にも性に基づく差別はあると証言したのも注目される。
報告者のマルコ・アウレリオ・メロ判事らは、男性が力で相手をねじ伏せ、命まで奪ったりする事を防ぐための同法は、ブラジルに今も残る男性至上主義や性に基づく差別解消にも役立つはずと説いた。また、マリア・ダ・ペーニャ法は男女平等の原則を侵すものではない事も再確認された。