ニッケイ新聞 2012年2月15日付け
ウゴ・チャベス大統領が1999年から3期にわたって政権を握るベネズエラで、若き対抗馬が登場し、話題となっている。14日付伯字紙が報じている。
10月7日に行われる大統領選挙でチャベス現大統領の対抗馬となる野党統一候補を選ぶ最終投票が12日に行われ、首都カラカスのあるミランダ州の知事であるエンリケ・カプリレス・ラドンスキー氏が勝利した。7月に40歳になる若い大統領候補は投票総数の約3分の2を占める64%を獲得し、31%で2位のパブロ・ペレス氏に大差をつけて勝利した。
自由経済主義を掲げる正義第一党所属のカプレリス氏は2000年にカラカス大都市圏のバルタ市市長に当選し、8年間市長をつとめた後、2008年の知事選で、チャベス大統領の第五共和国運動のリーダー格のひとりでもあったディオスダード・カベーロ前知事に勝利し、ミランダ州の知事となった。
裕福な家庭の出身で、父方はマスメディア・グループの一族、母方はベネズエラの映画館チェーンの創業者でもある。まだ独身で、一時ベネズエラの人気テレビ番組の女性司会者と交際していたため、芸能メディアにも頻繁に登場していたことで女性の間での関心も高かったという。
また政策面において、カプリレス氏はブラジルのルーラ前大統領に強い影響を受けている。同氏はルーラ氏が2003年に行った「フォーメ・ゼロ」に倣った政策を、ミランダ州にも導入したことを認めている。
そして、大統領候補選での勝利インタビューにおいてもブラジルの名をあげた。同氏は「わが国がブラジルと友好関係を築けることを確信している」としながらも「しかし、もしわが国がもっと開けていて、治安もよければ、ブラジル企業の投資がもっと得られていたはずだ」として、国内企業を優先するあまり、多額の貿易赤字を生んだチャベス政権を批判した。
また、チャベス大統領側から「右翼」と揶揄されたことに関しては、「〃右翼〃ではなく進歩だ。ルーラ氏はブラジルの政権を握っても、再々選するために憲法を変えるようなことはしなかった」と、憲法改正で大統領任期の延長を行ったチャベス氏を批判した。
また、12日の大統領候補選は、投票時間を過ぎてもまだ投票者の列が途切れないという前代未聞の事態が起きた。同国の人口は1800万人余りだが、16%に当たる290万人が投票し、関心の高さを伺わせた。