ニッケイ新聞 2012年2月21日付け
輸送関連の設備の欠陥により、サンパウロ州の工業界は年間で170億レアルもの余分な出費を強いられていることが判明した。20日付エスタード紙が報じている。
中国からブラジルまで輸入されたコンテナは、1万7千キロメートルの海路を35日かけて運ばれる。コンテナ1個をサントス港まで輸送する費用は、サイズや船主との交渉にもよるが、約1200米ドル(2千レアル)かかる。だが、サントス港からサンパウロ市までそれを運ぶ費用は、わずか77キロメートルの距離にもかかわらず、中国からの渡航とほぼ同じ額がかかってしまっている。
サンパウロ州工業連盟(Fiesp)の科学技術競争課(Decomtec)の調べによると、自動車道の不整備や港の手続きの煩雑さ、鉄道輸送のキャパシティ不足、倉庫の利用料など、品物を円滑に運べなかったためにかかる輸送経費は天井知らずで、サンパウロ州内の工業系の企業1211社が年間支払う余分な費用は170億レアルに上っている。
内訳別で見ると、悪質な道の走行でかかった輸送手段の維持費で62億レアル、商品の輸送の遅れで102億レアル、輸送の遅れによる倉庫の利用料として6億7500万レアルを無駄遣いしているという。これはサンパウロ州工業界の輸送・保管費の15%にあたる。
Decomtecのジョゼ・リカルド・ロリス課長は「現在は政策基本金利が高く、為替価値が下がっている中、燃料や輸送費は高止まりし、税金の高騰も止められない」としている。
だが、そういう状況下においても、インフラの質を改良すれば、輸送費を減らし、資金の流れを改善することは可能だ。実際にサンパウロ州に四つの工場を持つ企業のひとつは、渋滞を避けるため、サンパウロ市ブラスにある工場からグアルーリョスに近い運送会社までは軽トラックを走らせ、そこから各地に配送することで、全体支出の5%に及んでいた輸送費を50%削減することが出来た。
だが、改善への道のりは多難だ。出版からパルプ、都市開発などまで手がけるグルーポ・メリョラメントスのアルフリエド・プロジェール氏は「雨でトラックが外に出られない、トラックが道の穴で壊れた、船が予定していた荷を積まないまま出港といったトラブルが何度あったことか」とトラック輸送の問題を嘆き、こういった問題が国際的な競争力を失わせているとしている。
またASAトランスポルテスのヴァルジール・サントス氏は「船の荷降しに2日かかるなんてこともざらで、一銭も入ってこない状態でトラックを待たさなければならないことが何度あったか」と船舶輸送の問題を指摘している。