ニッケイ新聞 2012年2月28日付け
ブラジルが南極に構える基地で25日未明に火災が起き、2人が死亡、1人が重傷を負う惨事があった。26〜27日付伯字紙が報じている。
現場はブラジルの科学基地コマンダンテ・フェラスで、25日午前2時頃、今年1月にエタノール発電機が新設された発電施設から出火した。基地にいた海軍兵が消火につとめたが、乾いた空気と風であおられた火は勢いを増して拡大し、基地の70%を焼き尽くした。
これにより、カルロス・アルベルト・ヴィエイラ・フィゲイレド副士官とロベルト・ロペス・ドス・サントス第一軍曹の2人が死亡。証言者によると、サントス軍曹は消火にあたった海軍兵を助けようとしての死だったという。また、ルシアノ・ゴメス・メデイロス第一軍曹も負傷した。
火災当時の基地には15人の海軍兵、30人の調査隊ら計47人が滞在していたが、負傷したメデイロス軍曹を含む45人はチリ南端のプンタ・アレナスを経て、26日夜、帰国。研究者ら4人は南大河州で降り、41人はリオまで帰還した。一方、2人の兵士の遺体は、27日に再派遣された空軍機で帰国の途に着く。
この南極科学基地は、南極半島の先にあるキング・ジョージ島に1984年2月に開設された。広さ2700平米メートルで、実験室や作業所のほか、モーターボートなどの格納庫や図書館などもある総合施設は、発電施設と宿舎などが隣接し、火に弱い構造になっていたという。
また一方で、関係者は「南極基地への資金援助も十分ではなかった」と証言している。政府からの研究資金は減少傾向にあり、2002年予算は270万レアルまで削られ、その際は1982年にスタートしたブラジル南極プログラム(PROANTAR)からの出資がゼロで、環境庁予算のみになっていたという。2006年の見直しで予算は3080万レアルまで増えたが、2012年は前年比42%減の1070万レアルまで下がっていた。
事件後、政府は南極基地の再建を約束した。だが、ラウプ科学技術相によると回復には1年かかるといい、セルソ・アモリン国防相によると2年を要するという。また、基地が再建されるまでの調査や研究は、観測船の実験室などを使わざるを得なくなると言う。
また、この事故は25日付エスタード紙が、南極基地への貨物船が昨年12月に沈没し、燃料1万リットルが海に沈んだままである事実を隠していることを報道したのと同じタイミングで起こったものでもあった。