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3月1日にいよいよ発効=日伯社会保障協定とは=第1回=二重負担、掛け捨て防止=どちらか片側加入が原則

ニッケイ新聞 2012年2月28日付け

 3月1日から発効となる日伯社会保障協定。サンパウロ市では2月10日にブラジル日本商工会議所主催の昼食会で、同11日には文協ビルで詳細な説明会が実施された。日本側から厚生労働省年金局の斎藤隆・国際年金課長補佐ら、ブラジル側から国立社会保険院(INSS)のベネジット・ブルンカ給付部長ら両国の担当者が出席し、2日間で400人近くが訪れ活発に質疑応答が行われるなど、関心の高さがうかがえた。駐在員はもちろん、移住前に日本で就労して年金を払っていた人、デカセギしている間に日本で払っていた人などには関係の深い話題だ。概要、質疑応答2回、両国での手続きなど計4回に分けて報告する。

 この協定は、二国間の人的交流活発化にともない、問題となっていた保険料の二重負担、掛け捨て等を防ぐことが目的。今後、両国で働く人は日本かブラジル、いずれかの年金制度に加入することになるが、原則としては就労先の国の年金制度のみに加入することになる。
 日本企業の駐在員の場合、今後はブラジルにいる間は日本の年金制度は適用免除となりブラジルの制度に加入、日本で就労するブラジル人の場合、日本にいる間はブラジルの年金制度は適用免除となり日本の年金制度に加入することになる。
 ただし特別規定として、派遣元の国の制度にのみ加入することも例外的に認められる。派遣期間が5年以内と見込まれる場合(以下「一時派遣」)、両国への駐在員、あるいは自営業者は派遣期間中、就労先の国の制度加入が免除される。ただしこの規定は、いわゆる日本に「デカセギ」として渡航する人には適用されない。
 ブラジルへの駐在員の場合、被用者であれば厚生年金または国民年金に加入していること、日本の事業所との雇用関係が継続しておりそれに基づいて派遣されること、前回の派遣終了日から1年以上経過していることなどが条件となる。
 さらに自営業者の場合は、国民年金に加入していること、配偶者や子供がブラジルで就労しないことなども条件となる。
 派遣期間を延長する場合は3年のみ認められ、それ以上になれば相手国、つまりブラジルの年金制度に加入する必要がある。
     ◎
 今までは老齢年金を受け取るには、原則として日本では最低25年(30カ月)、ブラジルでは最低15年(180カ月)の年金加入期間が必要だった。ところがこの協定が発効する3月以降は、一方の国の年金加入期間だけでは受給資格を満たすことができない場合、もう一方の国の年金加入期間を足し合わせて計算できるようになる。
 注意すべきは、日本の年金(被用者年金保険や国民年金)に加入していた期間の分の年金は日本年金機構などが支給し、ブラジルの年金(RGPS、RPPS)などに加入していた期間の分の年金は、国立社会保険院(INSS)が別々に支給する点だ。どちらか片方が合算してまとめて支払う訳ではなく、それぞれの分だけが各国側から支払われる。
 例として日本の年金に13年、その後ブラジルの年金に12年加入した場合、協定発効前はどちらも支給条件を満たさず掛け捨てとなっていた。しかし、発効後は両方の期間を足し合わせて25年になるため、両国の年金支給条件を満たすことになる。
 給付額はそれぞれの年金保険料を支払った期間にもとづいて計算される。つまりこの例では日本の年金は13年分、ブラジルの年金は12年分の金額となる。
 両国の年金に重複して加入していた場合で、日本で年金を11年間支払い、その後ブラジルに派遣され日本の年金に加入したままブラジルの年金にも加入した状態が8年間続き、その後ブラジルの年金のみ6年間加入した人は、日本の年金加入期間が19年間、ブラジルの年金加入期間が14年間となる。この場合、通算される有効な年金支払い期間は25年間のみとなるので要注意だ。
 要点は、両国の加入期間で重複した期間は、どちらかの分でしか計算しないことだ。
 日本年金機構のHP(www.nenkin.go.jp/agreement/index.html)で協定の概要、手続きが参照でき、各申請書が入手できる。ブラジルでは、この協定に関する連絡機関はサンパウロ市ビラ・マリアーナ区の事務所(Rua Santa Cruz, 741)となっており、その他どこのINSS支所でも問い合わせ可能だ。(つづく、田中詩穂記者)