ニッケイ新聞 2012年3月1日付け
今年10月のサンパウロ市市長選に、共和党(PR)から歌手兼コメディアンのチリリッカ下院議員が立候補する。29日付エスタード紙が報じている。
現時点で候補擁立を表明しているのは、労働者党(PT)や民主社会党(PSDB)など8党で、最低8人が市長に立候補することになるが、PRの出してきた名前は意外なものだった。PRからはパウロ・セルジオ・パッソス運輸大臣の出馬が有力視されていたが、PRが選んだのは、2010年の下議選で全国最多の135万票(サンパウロ市では43万6千票)を稼いだタレント議員のチリリッカだった。
この決断を下したのはPR総務のヴァルデマル・コスタ・ネット下議で、本人には直接電話で出馬を打診。「リオのカーニバルの真っ最中に電話口で頭下げられちゃって。そんなこと考えたこともなかったけど、人々が望むのならやるだけさ」とチリリッカは受諾したという。
幼少時からセアラ州でサーカスのピエロとして育ったチリリッカは、1997年、コミックソングの「フロレンチーナ」が大ヒットして一躍有名人となった。その後コメディアンに転身し、2007年にレコルジ局のお笑い番組「ショウ・ド・トム」で再び人気者となった。サンパウロ州には2006年から在住している。
下院ではもっぱらおとなしいチリリッカも、今後はハダジ候補(PT)やセーラ候補(PSDB)とのテレビ討論も予想される。だが、「彼らはたしかに頭がいいけど自分のやり方で話すだけさ。人々の生活の苦しさは僕もわかっているからね」とチリリッカはひるむことなく語っている。
PRが自党候補にチリリッカを選んだのは、人気の高いチリリッカを出すことで、サンパウロ州でのPSDBとの関係を崩すことなく、国政でのPTとの同盟関係を保つためと見られている。