ニッケイ新聞 2012年3月3日付け
ブラジル内へのドルの大量流入によるレアル高に歯止めをかけるため、政府が1日、金融取引税(IOF)引き上げなどの対策を講じると発表、ジウマ大統領も欧米の中央銀行による多額の資金供給を「津波」と呼んで批判した。2日付エスタード紙が報じている。
政府は1日、これ以上のレアル高を招かないよう、ドル流入を抑制するための新たな対策を発表した。ひとつは、銀行や企業が国外で調達する3年以内の貸付金に6%の金融取引税を課すこと。また、国外の投資家が無記名預託証券を購入する際の金融取引税を6%から0%に引き下げることも発表した。
同日夜には中央銀行も、ブラジル製品やサービスを輸出する際の代価前払いを制限することを発表した。これにより、360日以上前の支払いや、輸入業者が銀行や他の企業から借りた金で支払った場合は通常の貸し付けと見なされ、その期日が3年以内の場合は金融取引税を払わなくてはいけなくなる。これまでは、期日や資金の出所に関しての制限はなかった。
これらの対策は、2月29日に欧州中央銀行が欧州の銀行に5300億ユーロを供給するという発表を受けてのもの。これで2カ月強で1兆ユーロの市場への供給がなされたことになるが、これに対し、ギド・マンテガ財務相は「これは為替戦争だ。でも、ブラジル政府は負けるわけにはいかない。短期間の資本流入をなんとしてでも食い止めないといけない。今後もさらなる対策を講じるつもりだ」と語っている。
だが、金融取引税引き上げ発表と中銀の市場介入もドル安レアル高を食い止める事はできず、1日は1ドル=1・712レアルで終わった。
一方、政府が金融取引税引き上げを発表してから数時間後、ジウマ大統領は大統領府で、「先進国がばら撒いた4兆7千億米ドルもの貨幣が世界中に津波のようになだれ込んでいる。全く不合理きわまりない。他の国、とりわけ新興国にとってこんな卑怯なやり方はない」と経済危機に瀕した欧米先進国の経済対策を批判。「昨日(2月29日)はユーロが追加供給された。日本もそのやり方に倣おうとしている」と怒りの矛先を日本にまで向けた。その上で「新興国市場を食い荒らすような状況は何としてでも止める」と語った。