ニッケイ新聞 2012年3月6日付け
2011年経済が減速化した影響などで、国内銀行では債務不履行への懸念が増し、融資を回収できなかった時のための資金が40%も上積みされたと4日付フォーリャ紙が報じた。
個人融資や企業融資は経済活動活性化の一手段で、政府の掛け声もあって増加した銀行融資とそれに伴う消費熱は、国際的な金融危機の中でのブラジルの回復を早めた。
ところが、雇用拡大や所得向上にも支えられた国内消費で米国を震源とした国際金融危機からいち早く脱却したブラジルで、債務不履行が深刻化している事を肌で感じているのが銀行だ。
特に、欧州経済危機が表面化して以来の経済減速化は深刻で、11年の経済成長率は、経済基本金利引下げその他の活性化政策をもってしても、2・8%程度だったと見られている。
ブラジルの経済成長率は2009年第4四半期から下がり始め、11年第1四半期にわずかに盛り返したものの、その後も下降。11年第4四半期はほぼゼロ成長だったとみられており、2012年初頭も経済活動の再活性化に悩んでいる。
このような状況を反映した数字の一つが回収不能となった融資への貸倒引当金で、昨年末日現在の国内大手、中堅23銀行が貸し付けた金額は1兆697億レアル。1兆4170億レアルだった10年の19・8%増だが、貸倒引当金は640億レアルで、450億レアルだった前年の42・2%増となった。
前年同月比で見た融資額の伸びは11年1月の20・2%増が、今年1月は18・4%増と横ばいから微減の中、貸倒引当金は11年1月の前年同月比2・5%減が今年1月は22・4%増に急増。両者の伸び率は11年12月から2カ月連続で逆転したままだ。
返済が90日以上遅れる債務不履行は、個人が全体の融資額の7・6%で、09年12月以来の最高値。企業ではやや減少して3・7%だが、高率にはかわりない。
貸し付けた金を利子と共に回収し、次の資金とする銀行にとり、資金回収が遅れたり不能となる事は利益の損失に直結するため、融資時の審査の厳格化や貸付金利引き上げといった動きは全行共通だ。
また、1日付エスタード紙によると、全国工業連合の調査による2月の消費者信頼指数は1月の113・6ポイントより0・7%減の112・8ポイント。5カ月間1・4%程度ずつ上昇した後の低下だが、この数字は昨年2月より2%低く、インフレ上昇や雇用喪失などを懸念する国民の不安を反映している。
米国発の国際金融危機以来3年間に先進諸国の中銀が市場に投入した資金は8兆8千億ドルで、まさに「通貨の津波」。ジウマ大統領は訪問先のドイツ首相に苦言を呈しているが、経済刺激のために促進された「融資の津波」はブラジル民と銀行の頭痛の種になっている。