ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 「通貨の津波」vs「保護主義」=伯・独首脳が批判合戦=中国経済も市場を揺する=11年の成長は2・7%

「通貨の津波」vs「保護主義」=伯・独首脳が批判合戦=中国経済も市場を揺する=11年の成長は2・7%

ニッケイ新聞 2012年3月7日付け

 ドイツを訪問中のジウマ大統領が5日、先進国の通貨価値の下落は「通貨の津波」が招いたと発言。これに対し、メルケル首相は「保護主義」への懸念を表明と6日付伯字紙が報じた。中国の成長目標引き下げで証券市場が揺れるなど、ブラジルの成長を脅かす材料は尽きないようだ。

 「信頼こそが危機を乗り切る道」—。ドイツのハノーバーで開催中の国際情報通信技術見本市の開会式でメルケル首相がこう語った。
 5日にドイツに到着したジウマ大統領は、報道陣を前に、先進国の通貨価値の下落は「通貨の津波」によって人為的に起きたと批判。昨年12月以降1兆ユーロ、2008年に始まった国際的な金融危機以降では8兆8千億ドルが市場に注入された事でドル安レアル高が進むブラジルでは、為替変動による損失回避のために新たな対策を講ずる意向も明らかにした。
 この発言から約8時間後、メルケル首相は「大統領は欧米での大量の通貨流入への懸念を表明したが、我々には(新興国の)保護主義的な政策が目に付く」と発言。それに続いたのが前述の「信頼こそ」の言葉だ。
 レアル高回避策としてブラジルが1日に導入したのは、外国人投資家によるブラジルへの投資や国外で調達した融資への金融取引税の徴税対象を、3年以内まで拡大した事と、ブラジル製品やサービス輸出に対する前払い制限の2種(3日付本紙でも報道)だが、ジウマ大統領は5日、さらに強固な対策を準備するよう経済スタッフに指示を出した。
 ブラジルへのドル流入は際限がなく、7日の通貨政策委員会(Copom)で経済基本金利(Selic)を0・75%ポイント引き下げて年9・75%にしたとしても、ドル流入を阻止し、景気を刺激するには足りずとの見方があるからだ。
 ジウマ大統領の追加対策準備への指示は、ブラジルへのドル流入は国内外の金利差を利用する投機的投資のせいとの説明だけでは不充分な事も意味しており、欧州経済危機の影響はかなり根強い。
 一方、欧州経済危機が別の形で表れたのは、中国の成長目標引下げによる証券市場の動揺。2005年来の中国の成長目標8%が7・5%に下方修正されたもので、同国の成長見込みは8・2%とした国際通貨基金は、欧州経済の回復次第で成長見込み半減の可能性も示唆。中国を最大の貿易相手国とするブラジルには聞き捨てならない情報で、5日の世界証券市場は、米国の0・11%からブラジルの1・21%まで、軒並み下落を記録した。
 世界経済の冷え込みが続く中、地理統計院が6日に発表した2011年の経済成長は、中銀予想の2・82%以下の2・7%に終わった。ルーラ前大統領に倣い、年4%以上の成長を達成し、高支持率の維持と国会運営改善を狙う大統領には、舵取り困難な状況が今しばらく続くようだ。