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私達が生まれ育ったこの街と海辺を

ニッケイ新聞 2012年3月10日付け

 選挙年なのに、大統領は労働者党(PT)だけ身びいきし、自分達の党は顧みようとしない—。民主運動党(PMDB)を中心とした連立与党内で現政権への不満が高まり、国家陸路運輸庁(ANTT)のベルナルド・フィゲイレド長官の再任拒否など、緊迫した事態が生じている。

 7日上院で起きたフィゲイレド長官の再任拒否は連立与党内の不満表出の一つで、ジルベルト・カルヴァーリョ大統領府総務室長の「緊迫した事態」に直面との発言を8日付伯字紙が掲載。事態を重く見たジウマ大統領は8日朝、ミシェル・テメル副大統領を官邸に呼んで助けを要請した。
 ドイツへの公式訪問を前にしたジウマ大統領がルーラ前大統領に助言を求めたのは1日の事だったが、前大統領が入院加療中で面会も制限されている中、PMDBなどの不満分子が動いたのが7日の上院でのANTT長官の再任拒否だった。
 州と州をまたぐ長距離バスや鉄道などの陸運関係を取り仕切るANTTは、リオ〜サンパウロ市〜カンピーナスをつなぐ高速鉄道計画進展の鍵を握る機関で、長官の続投拒否はジウマ政権の目玉政策の遅れも意味する。
 フィゲイレド長官の続投は36対31で拒否され、PMDB以外の連立与党やPTも反対票を投じた事が明らか。ANTTの運営や企業との交渉面での不評も続投拒否の理由の一つだ。
 だが、1、2月に支払われた議員割り当て金による事業資金は08〜11年の未払い額の3・92%にあたる7220万レアルで、PMDBへの支払は野党にも劣る5番目。PT閣僚は大型予算を持つ省庁を統括し、新企画の発表はPT閣僚のみ。大臣交代の要請もなしのつぶてなどで連立与党内の不満が募っているのは事実だ。
 ANTT長官の再任拒否以外にも、不満の噴出は続いており、上院が昨年承認した環境保護法も政府には不本意な再改定が加えられ、下院での審議は延長など、重要案件の審議は停止状態だ。
 実際には、ジウマ政権に対する与党側の不満は昨年中にも表面化しており、国境警備の責任をミシェル・テメル副大統領に託す、予算案承認のために議員割り当て金の払い出しを約束などの方策が採られていた。
 ところが、もっとも根本的な対話不足は解消されておらず、大統領は自分達に目をかけてくれない、PTばかり甘い汁を吸っているという不満は一向に収まらない。
 今回のANTT長官再任拒否は議員割り当て金支払いの意向表明にも関わらず起きており、大統領も下院議長の経験もある副大統領の助けを仰がざるを得なくなったというのが実情だ。実務能力は高いが気が短い、相手の言う事を聞かないなどの批判もある大統領は、今、議会との調停能力など、政治家としての器の大きさを試されている。