ニッケイ新聞 2012年3月10日付け
去年の3月11日午後2時46分、悪の権化のような化け物が三陸沿岸を襲い町や村を痛めつけた。大きな地震が起こり、巨大な津波が宮城県の石巻や岩手県の陸前高田に襲来し市民と建物をひと飲みにした。福島県の原発事故は将に危機的な状況に陥り、政府もなす術がなく右だ左だの醜態であり、列島は悲愁と嘆きに沈むばかりだったのは記憶に新しい▼この東日本大震災の死者は1万5854人。行方不明は3167人であり、住宅やビルの倒壊と流失は数え切れない。あの陸前高田の広大な松原も、樹齢200年かの松が1本も残さずに海の彼方へ—。宮城県南三陸町では、防災対策庁舎が津波で破壊され鉄筋しか残らなかったが、この庁舎でマイクを握り「津波がきます。避難して下さい」と絶叫した24歳の遠藤未希さんも、津波に攫われてしまった▼あの哀しみから1年—。あす11日には、東京で大震災1周忌の追悼会が開かれ、首相を始め衆参議長と最高裁長官らが参列し鎮魂の祈りを捧げる。天皇陛下も体調を崩されているが、やっと医師団がご臨席をお許しになり皇后さまもご一緒に行幸されることになったのは眞に喜ばしい。あの震災の悲嘆にうなだれるなかにも被災者やボランテイアらが助け合う情景が各地で見られ外国のマスコミも「見事な和」と報じ、各地からの義捐金も5000億円を突破と麗しい話題も多い▼ここサンパウロでも、11日午後2時から文協大講堂で仏連の高僧らが「大震災1周忌」を行い、震災発生の2時46分には犠牲となった方々の冥福を祈り黙祷するそうだ。一人でも多くの方々のご参列を。(遯)