ニッケイ新聞 2012年3月13日付け
2011年は1・6%の伸びに止まった鉱工業は12年も苦戦を強いられ、脱工業化に拍車がかかりそうだ。他国を寄せ付けない勢いで成長し、経済危機の欧州本社を利益送金で助けたブラジルの自動車産業は生産ランキングが後退し、一次産品の輸出比率が拡大など、鉱工業の不振が様々な数字となって表れている。
2008〜09年の国際的な金融危機を脱したと評価された世界の自動車産業界で、ブラジルは生産国としてのランキングが7位に低下との記事は10日付エスタード紙。新興国の消費に支えられ、世界では8010万台生産の新記録を達成したのに、ブラジルの生産は0・7%増の340万台に止まった。
自動車産業の不振はドル安レアル高による輸入増も一因で、生産340万台に対し、販売は363万台。総数の23・6%は輸入車だった。
所得向上や消費促進策により、ブラジルの自動車販売数は、中国の1850万台や米国の1273万台、日本の421万台に次ぐ4位。11年の成長率で後塵を拝したドイツも12万5千台差でおさえて、10年のランキングを維持した。
ところが、生産では、1840万台の中国や860万台の米国、840万台の日本、630万台のドイツ、460万台の韓国が10年の順位を維持、インドも10・7%増の390万台を生産したが、ブラジルの生産の伸びは10年の14%から0・7%増に縮小した。
現在の自動車生産の主流は10年に51%を占めるに至ったアジア勢が握り続けているといえるが、同様の傾向はそれ以外の産業でも拡大中。
それだけに、不振の鉱工業の中でも3・2%成長した鉱業界の懸念は、中国が成長目標を8%から7・5%に縮小させた事。鉄鉱石の需要が減れば価格低下も考えられ、輸出量、金額が共に落ち込む恐れがある。
12日付エスタード紙によれば、鉄鉱石はブラジルの輸出を牽引する一次産品の筆頭格で、原油や大豆、肉、砂糖、カフェを合わせた6品目が11年の輸出に占めた割合は47・1%。2006年の28・4%から急増したのは、コモディティ価格の上昇と、レアル高や輸出手続の煩雑さと重税、エネルギー価格の上昇に質の高い労働力の不足などによる工業製品の国際競争力の低下の反映だ。
経済危機の中にある欧州や経済成長目標を縮小させた中国でも食料品の需要は高止まりするはずで、輸出に占める一次産品の比率拡大は今後も続くと見られているが、鉱工業界が失速して雇用が1人減れば、他の分野の雇用は4人減る。政府の経済スタッフは、ドル価を1・70レアル以上に保ち、減税などの景気刺激策を採るとの姿勢を明らかにしているが、工業界が経費削減のために原材料を輸入、消費者も低価格の輸入品歓迎という流れが続けば、その努力も水泡に帰しかねない。