ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 軍政時代=行方不明の政治犯捜査へ=遺体隠蔽なら終身犯罪=恩赦法改定めぐり軍と衝突

軍政時代=行方不明の政治犯捜査へ=遺体隠蔽なら終身犯罪=恩赦法改定めぐり軍と衝突

ニッケイ新聞 2012年3月13日付け

 連邦検察庁(MPF)が、軍政時代に政治犯の誘拐や遺体隠蔽を行った関係者の捜査に力を入れはじめた。11日付エスタード紙が報じている。
 9日、軍政時代に行方不明となった156人の政治犯の1人、エドガルジ・デ・アキノ・ドゥアルテさんに関する今年2度目の証人喚問がサンパウロ市で行われた。ドゥアルテさんと同時期に収監されていた政治犯の証言によると、ドゥアルテさんの姿が最後に確認されたのは1973年7月に政治社会警察(Dops)の独房の中だったという。
 サンパウロ市では現在極秘のうちに、ドゥアルテさんを含む4人の政治犯の行方を探る捜査が続いている。現在の時点では裁判に持ち込まれた例はないものの、同様の捜査は、ブラジリアなどでも進められている。
 MPFは、政治犯の死体の遺棄や隠蔽行為は終身犯罪で、1979年に施行された恩赦法の対象にはならないとの見方で捜査を進めている。恩赦法は、軍政時代に捕えられた政治犯や国外逃亡犯に対する恩赦を規定するものだが、軍人が政治犯に行った拷問も恩赦の対象となる。
 なお、陸軍のカルロス・アルベルト・ブリリャンテ・ウストラ大佐は、ドゥアルテさんが収監されていた時代の陸軍秘密警察(DOI—Codi)の司令官であったことから、名前が取り沙汰されている。
 こうした動きには、陸軍予備役のアウグスト・エレノ将軍らが「国際人権裁判所の要請に応えるために、MPFが連邦最高裁判所(STF)の判決を無視するのはいかがなものか」と反論し、難色を示している。STFは2010年、ブラジル弁護士会(OAB)が出していた恩赦法の見直し案を却下している。
 軍政下の問題に関し、政府と軍の間では2月から緊迫した空気が流れている。2月16日、陸・海・空軍はウェブサイトで、就任式で軍政政府を批判したエレオノラ・メニクッシ女性相と軍政下の迫害当事者は法的処分の対象となりうると発言したマリア・ド・ロザリオ人権相を解任しなかったとして、ジウマ大統領を批判する声明を発表した。大統領はその声明を良しとせず、アモリン国防相に事態収拾を命令。国防相は23日に3軍の兵士代表らと交渉し、問題文書を消去させたが、これによって軍関係者との間の軋轢(あつれき)がより高まっている。
 今回のMPFの捜査開始は、恩赦法見直しへの道が再び築かれたことを意味し、真相究明委員会の動きも活性化すると見られている。だが、OABは肯定的な見方を示しつつも、最高裁での判断が変わらない限り、捜査が進展し起訴に至る可能性はわずかと見ている。