ニッケイ新聞 2012年3月16日付け
ラジオで某政治評論家がいまの政治状況を「ブラジルサッカー連盟(CBF)会長辞任もPMDBの造反も、同じ〃酸欠〃症状から生まれた双子の現象だ」とコメントしたのを聞いて納得した▼ジウマ大統領が昨年就任して以来、大統領府(プラナルト宮)への出入りを厳しく制限したことの余波だ。FHC、ルーラと異なり、現大統領は裏の政治交渉を好まないといわれる。だから〃酸素〃が欠乏したというわけだ▼リカルド・テイシェイラCBF会長はスポーツ用品メーカーから賄賂をもらった疑いなどをもたれ、何度も国会審問にも呼ばれたが、ルーラの頃まではプラナルトに自由に出入りでき〃酸素〃補給され、延命してきた▼PMDBも同様に酸素補給がされていたが、地方選挙を目前にして〃酸欠〃が深刻化して騒ぎ始めた。つまり、ジウマ政権2年目にしてその持ち味たる「交渉嫌い」と、それまでの政治的伝統との違いが明確になり、各方面で問題として噴出しはじめた▼PMDBの造反に対して、大統領は政府リーダー取替えというしっぺ返しをし、それに対して上院で7議席を握るPRまでが「反対派に回る」と宣言するところまで来た。もちろん、裏ではPSDBがサンパウロ市長選挙をにらんで造反組を手招きして迎えようとしている▼ジウマ政権がこの騒動を無傷で乗り切れば、2年後の大統領選挙では間違いなく優位に立つ。しかし、したたかなPMDBは、大統領のストレスがこうじてガンが再発する可能性すらも考慮にいれ、万が一の時は現テメル副大統領が昇格することも視野に入れているといわれる。おそらく今がジウマ政権の正念場だ。(深)