ニッケイ新聞 2012年3月17日付け
エレオノーラ・メニクッシ女性政策局長官が15日、レイプ被害などによる合法的な中絶を行う医療機関がブラジルでは少ないと批判した。16日付伯字紙が報じた。
エレオノーラ長官は15日に行われた国家保健審議会(CNS)の会議の席上で、「ブラジルの法律上は、母体に危害が及ぶ場合やレイプ被害による妊娠中絶は合法化されているのに、実際に妊娠中絶に対応できる医療機関は63しかない上、宗教団体などが運営に加わっていることで対応しないところもある」として、ブラジルの現状の中絶問題に関する医療体制を批判する発言を行った。
この発言はフェミニスト団体から喝采を受けたが、全国司教会議(CNBB)代表のクロヴィス・ボンフレール氏は、「宗教は尊重されねばならない。医療サービスを提供するのは州の役目だ」と反論した。
これに対しエレオノーラ長官は、レイプ被害者へのサービスの質が不充分で、合法的な中絶要請に応える医療機関の少ないことを示す調査結果を見せ、「中絶要請を断るような医師は入れ替えるべき」と発言した。
09年の場合、レイプ被害者に対応する病院は442で、中絶手術を行う機関は60。現在は557と63に増えたが、「リオでは1日に20件のレイプが起きており、この数ではとても足りない」とアパレシーダ・ゴンサルヴェス女性暴力対策局長は語っている。
ブラジルの刑法では、レイプや妊婦の体に危害が及ぶ場合の中絶は、妊娠12週目以内で医師や精神科医の鑑定で保障された場合に合法とされ、手術に応じなかった医師は3〜10年の懲役刑と定められている。現在、妊娠中絶に関する刑法改正の動きがあり、前記のような状況なら医師や精神科医の鑑定は不要との案が出され、9日に上院の委員会で承認されている。