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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年3月20日付け

 震災による福島原発の事故で「安全神話」はもろくも崩れ去ったが、あの時の菅首相の「脱原発」から日本の電力事情は急速に悪化している。旧ソ連のチェルノブイリの事故ではないが、原子力発電には「危険」があり、万全の対策を講じているのだが、あの大震災のような予想を越える巨大な津波もあり、甚大な被害を出したのは、ご承知の通りである▼それでも—原発を採用したのは、燃料のウランが獲得しやすく、安定的に発電できるという利点があったからだし、日本には54基の原発がある。だが—今も動いているのは2基だけなのである。そして、あと2カ月ばかりするとすべての原発が止まる非常事態が来るかもしれない。原発は、全電力の30%超を供給してきたが、現状のまま進めば電力不足に陥るのは誰の目にもあきらかである▼今も不足しているのだが、電力会社が融通しあって「停電」を避けており、火力発電に軸を移しているけれども、この燃料代だけでも既に3兆円も支払い、電力会社は悲鳴を上げている。経団連は、この状況が2年〜3年も続けば企業や工場は海外に進出し、日本は深刻な産業空洞化すると警告している。勿論、太陽光や風力発電を急ぐべきだが、これには長い時間が掛かるし、今、直ぐに有効な政策とは云い難い▼枝野経産相は先の2月に「今の電力状況では、原発を再稼動させる必要がある」と述べたが、この認識は正しい。九州電力の赤字も、火力への燃料代が原因だし、東京電力も電気料金の値上げを検討するなど事態は緊迫しており、政府の前向きな決断を求めたい。(遯)