ニッケイ新聞 2012年3月21日付け
連邦警察と連邦検察庁が、11年11月7日に起きたリオ州沖のカンポス盆地フラデ油田での原油流出事故と今月確認された新たな原油漏れは、シェブロン社が必要以上に強い圧力をかけて採掘を行おうとしたために起きたとの報告をまとめ、同社を起訴する可能性が強まってきた。
昨年11月に2400バレルの原油流出が起きたフラデ油田で新たな原油漏れが確認されたのは今月4日。当局への報告は10日程遅れ、14日にはシェブロン社からの営業停止申請が出されていたが、20日付伯字紙は、連警や検察が同社を起訴する可能性が強まった事を報じている。
16〜20日付伯字紙によれば、フラデ油田での新たな原油漏れは、昨年11月に原油流出が起きた場所から約3キロ離れた所で起き、約800メートルにわたる岩の裂け目から染み出した原油が海面に作った1キロのしみは16日に海軍が確認している。
フラデ油田でのシェブロン社の原油採掘量は日産6万1500バレルだが、同社は14日、国家原油庁(ANP)に同地域での採掘作業停止を申し入れた。
一方、11月の原油流出事故の捜査を行っていた連警と検察は、シェブロン社は認可された範囲外の深さまで採掘を進めようとしていた上、原油を取り巻く壁が耐えうる範囲を超える圧力を加えて採掘作業を行っていたと判断。シェブロン社や採掘作業を担当するトランスオーシャン社は事故の起きる可能性を知りつつ作業を進めていたとの報告をまとめている。
現場付近では海底が沈下している事はシェブロン社も認めているが、連警や検察は、海底の状況は両社がコントロールできる範囲を超えており、7平方キロの地域では新たな原油流出が起きる可能性が高いとの見解も明らかにしている。
検察などは、今回の原油漏れは海底沈下で出来た岩盤のひびから染み出る形で起きており、シェブロン社のいうような個別の事故ではなく、昨年の事故と原因を一にすると判断。
今回の事故に関するシェブロン社の報告は20日に提出され、21日にはブラジル側の諸機関が内容を検討するが、シェブロンとトランスオーシャンが起訴された場合、刑事責任が問われ、国内での操業禁止となる可能性も高い。
新たな原油漏れが確認された現場には、ANPの命令で原油回収用の装置が置かれた。また、両社の責任者17人(外国人12人とブラジル人5人)には16日夜、司法当局の許可なく出国する事を禁ずる処置がとられた。
連邦検察官のエドゥアルド・サントス・オリヴェイラ氏は、シェブロン社が採掘作業停止を申し入れたのは同社自身が責任を認めた証拠とし、今回確認された原油漏れは同社が報告した5リットルを大きく上回る可能性も指摘している。