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(中)=食い違う両者の〃証言〃=医師「ホームは病院じゃない」

ニッケイ新聞 2012年3月23日付け

 緊急入院2日後の1月27日早朝、医者から右足の切断を宣告された。「何とか避けられないか」という徳永さんに対し、医者は「足を切らなかったら、毒素が体中にまわって毒血症になる恐れがある」と言われた。「切断した時には、切っても血が出ないような状態だった」という。
 「医師からは『左足もいずれ切断しないと危険』と言われたが、治療で改善が見られる可能性があるなら残して欲しいと頼んだ」。しかし、ナツさんは2月3日の朝に亡くなった。
 「病院の医者が訴えると言っていることをイヴァン医師に話したら、その担当医の名前を聞かれ、『直接話す』と言っていた」。何故か、それ以降、告訴の話は一切出なくなったという。
 ナツさんが亡くなった日、電話した徳永さんに、イヴァン医師はただ「お悔やみを」と一言言っただけだった。
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 徳永さんから聞いた経緯を、イヴァン医師、根塚ホーム長、正看護婦のメイリ・カルアーリョさんらにぶつけたところ、〃興味深い〃ことに全く違う答えが返ってきた。
 同ホームでは、准看護婦9人が昼夜2人ずつ常駐し、入居者の病状は彼らが把握している。1人部屋、2人部屋合わせて23部屋があり、現在の入居者は約30人。平均年齢は87歳だ。
 何か問題があったときには、週に3回訪れる正看護婦に報告、正看護婦は自分で判断せず、必ず医師に相談する決まりになっているという。
 イヴァン医師によれば、ナツさんの最初の診察では、高血圧、動悸、肥満、関節炎、高尿酸値のほか、若干の認知症がみられ、様々な薬を服用し、日に3度、酸素吸入をしていたという。
 「イヴァン医師の診療所で最初に痛風だと診断された」という徳永さんの記憶については、「そんな診断はしていない」と真っ向から否定。
 「足だけの痛みを訴えたことは1度もない。むしろ肩や体中の痛みを訴えていた」と主張する。
 「入院1週間前、右足が黒くなっていたので見せようとした」との証言に対し、正看護婦のメイリさんは「そんなことは言っていない」とかぶりを振る。
 メイリさんの説明によればこうだ。病院へ移る2日前の1月23日朝、ナツさんにシャワーを浴びさせていたときに、右足の指先が黒くなっているのに気付き、イヴァン医師に電話。指示にもとづき、血の循環が良くなる薬を処方、湿布を貼って安静にさせたという。
 24日は前日見たときと比べ、「右足のもっと上の部分まで黒くなっていた」。翌朝、ナツさんが「足が痛い」と激しく訴えたため、見ると右足が真っ黒になり、左足も少し黒くなり始めていたという。
 「イヴァン医師に報告すると『病院に連れて行ったほうがいい』と指示され、徳永さんに連絡したようだ。「3日間であの状態になった」というメイリさんの証言に対し、イヴァン医師は「医学的にあり得る」と賛同した。
 体中の痛みをどう診断していたのかと聞くと、イヴァン医師は「関節炎が原因か、あるいは体重で負担がかかっていたのだと思う」という。痛いと訴えられたときにはそのつど鎮痛剤を打ち「回復していた」という。
 「体中が痛いということは言っていたが、足の痛みは訴えなかった」と強調、「あくまで23日に初めて看護婦が気付いたこと。自分自身は足が黒くなっているのは見ていない」という。
 「徳永さんは病院と勘違いしているのではないか。ホームは足を治療するための場所ではない」と肩をすくめた。
(つづく、田中詩穂記者)

写真=週に一度、入居者全員を診察するイヴァン医師。「足だけの痛みを訴えたことは一度もない」と証言する