ニッケイ新聞 2012年3月30日付け
サンパウロ州立大学(Unesp)とアメリカ航空宇宙局(NASA)が行った調査によると、サンパウロ市では東部やセントロの気温が高い地域と南部や北部の気温が低い地域との温度差が14度に及び、ヒートアイランド現象が進んでいると26日付エスタード紙が報じた。
ヒートアイランド(直訳すると〃熱の島〃)とは都市部と周辺部に気温差が生じる現象で、気温分布図上の等温線が都市部を中心に閉じた形となり、都市部が周辺部から浮いた島のように見える事からこう呼ばれる。
サンパウロ市では、東部のイタイン・パウリスタやイタケーラなどとセントロは気温が高く、カンタレーラ山系に沿う北部やマッタ・アトランチカ(大西洋岸森林地帯)につながりビリングス湖などの貯水池もある南部は気温が低いという傾向があり、その差は実に最高14度に及んだという。
調査を担当したサンパウロ州立大学マグダ・ロンバルド教授によると、1985年に行われた同種の調査では、サンパウロ市内の気温差は最大10度だったが、NASAの協力を初めて得た形の最新調査では、イタイン・パウリスタで30度を超えた日にカンタレーラ山系に近い北部は20度以下と、温度格差が広がった。
マグダ教授は、サンパウロ市での温度格差は、樹木の不足や建造物の過密化が原因で、その影響は東部やセントロの一部でより大きいという。気温が特に高いのは、開発が近年急に進み、アパートも立ち並ぶ一方で造園などが遅れている東部。1、2月のサンパウロ市の最高気温はイタイン・パウリスタの33・2度と36・1度、3月はペーニャの36・1度と、全て東部だ。
一方、カンタレーラ山系沿いの北部の冬は暖房が欲しくなる程。同地区でも今年の夏は暑かったというが、姪の世話をするためにイタイン・パウリスタに通うイタクアケセトゥーバ在住の女性が、イタインでは傘を差してサングラスをかけ、水を片手に歩き出すというのには及ばない。
市街地の気温上昇は世界的な傾向だが、緑化が進んでいる米国のニューヨークの気温格差は6度以下。サンパウロ市のように14度も違うというのは、市街化や緑化計画に不備がある証拠だ。
専門家は、気温格差を減らす唯一の手段は植樹などの緑化だというが、カサビ市政での造園計画は公約の半分程度の履行率。サンパウロ市では近年、コンクリートやアスファルトを多用した地区が増え、気温がより上がりやすくなっている上、気温上昇で冷房や扇風機などを使う機会が増えれば、生活や生産に使われた熱の放出も増え、気温上昇が一段と進む。
気温格差の拡大と関係がありそうなのは、サンパウロ市で強い雨や雷の発生が増えている事。秋になったとはいえ、緑が少ないコンクリートジャングルで気温上昇頻発となれば、洪水被害も気にかかる。