ニッケイ新聞 2012年3月30日付け
拙宅アパートはサンパウロ市グロリア街にあるが、今週は2晩続けて5、6時間ずつ停電して往生した。仮にもセントロの一角であり、病院や商店、レストランもある街路なのにこのザマ…と出るのはため息ばかり▼停電の時、驚くほど役に立ったのが、家内が今年初めに日本から持ってきた災害用品だった。日本では開店祝いのプレゼントとしてタダで配っていたという「手回し発電ラジオ」は、50回ほどハンドルをクルクルやれば30分ほどもラジオが聴け、ライトまで点く。電池の心配をせずにラジオと明りが使えるのは実にありがたい▼冷たいシャワーを浴びながら、「日本ではいざという時にしか使わない災害用品だが、ここでは日用品になる」としみじみ感じた。大震災の経験を昇華し、洗練された日本の各種防災用品を当地で販売すれば、きっと歓迎される。サンパウロ市はもちろん、地方のインフラが脆弱な地域では、それこそ「必需品」と喜ばれること請け合いだ▼インターネットも頻繁に止まる。昨年開所式をしたばかりのメトロ4号線も毎月故障して止まる。昨日はCPTMのフランシスコ・モラット駅で電車が止まっただけで暴動にまで発展した。サッカーチームの応援団が殺し合いを演じた上、殺した相手の顔写真をサイトに掲げて「ミッソン・コンプリーダ(使命達成)」と大書きする。こんな状態で、どうして国際的大イベントを誘致しようと思うのか▼基本的な生活インフラすら整っていないのに、高速鉄道や原子力発電所、宇宙ロケット開発などは本当に必要なのか。パンタナル(湿原)に高層ビルは建たない。高度経済成長を望むなら、まずは基礎固めを。(深)