ニッケイ新聞 2012年4月3日付け
ゴイアス州の検察官から政治家に転身し、汚職追及の急先鋒とされていた民主党(DEM)のデモステネス・トーレス上議が、汚職疑惑で辞任を要請され、応じなければ党から追放されるという状況に追い込まれていると3月31日〜4月2日付伯字紙が報じている。
政治家の面の皮は本当に厚くなった—。2007年に民主運動党(PMDB)のレナン・カリェイロス上議の汚職疑惑を追及していた時のデモステネス上議の言葉だ。
2003年の上議就任以来、9年余の任期中、汚職疑惑に対する急先鋒的役割を果たしてきた野党議員のデモステネス氏は、1983年からゴイアス州検察局で働き、州保安局長を務めた事もある。2009年からは上院で最も重要とされる憲政委員会の委員長も務めてきた。
ところが、そのデモステネス氏が、スロットマシンを使った賭博などの疑惑で捕まった企業家のカショエイラことカルロス・アウグスト・ラモス容疑者と密接な関係にあり、不正な金や高価なプレゼントを受け取り、関係者のために便宜を図ってくれるよう頼むなどのやり取りがあった事が明るみに出た。
連邦警察がゴイアス州での不正を暴くために進めていたモンテ・カルロ作戦でラモス容疑者が逮捕されたのは2月29日の事だが、同容疑者との通話内容が雑誌カルタ・カピタルやグローボ紙にすっぱ抜かれた3月23日以降、汚職追及者だったデモステネス氏が追及される側に転じた。
盗聴によれば、デモステネス氏はラモス氏が集めた金の30%を受け取る事になっており、公的な情報をラモス氏に流すなどの不正の他、W杯関係の広報絡みの入札で、ある業者に便宜を図るようラモス氏に依頼したりもしている。
盗聴内容が漏れてからのデモステネス氏は、DEMの上院リーダーを辞任。ブラジル弁護士会は速やかに上議を辞任するよう求めたが、2日に党で釈明を行うなど、政治生命をつなぎとめるためにあがいている状態だ。
ただ、連邦直轄区でのDEMメンサロン事件で印象を悪くしたDEMにとっては、再び起きた汚職疑惑でこれ以上党の印象が悪くなるのを避けたいのはやまやまで、デモステネス氏が自発的に辞任しない場合は、追放処分を考えている。
ラモス容疑者は、ゴイアス州を中心とした政界や業界で幅広い人脈を持ち、賭博以外にも、医薬品の研究開発や建設、司法関係などの企業グループを通し、不正を働いていたとされる。
ラモス容疑者の周辺では、ゴイアス州出身の連邦議員や州政府関係者、インフラエロなどの公的機関職員などの名前も浮上しており、リオ選出のステパン・ネルセシアン下議は、同容疑者から受け取った17万5千レアルの内16万レアルを返金の上、社会大衆党に休職届けを出したという。