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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年4月3日付け

 日本で1年8カ月ぶりに死刑が執行されたのニュースが、かなり大きく報道されている。死刑制度に疑問を持つ千葉景子元法相も、死刑執行には抵抗したようだが、最終的には命令書に署名して執行したの経緯についての記憶は新しい。その後、諸種の事由で執行は停止したままだったのを小川敏夫法相が、3人の死刑執行に踏み切ったのだが、この決断に対して新聞などの批判的な記事が目立つ▼この問題の根は深く、自民党政権のときにも法務大臣の個人的な理由から死刑の命令書に署名しない方がいたし、宗教的な理由から「死刑拒否」の法相もいた。こうした政治的な風潮に敢然と挑戦したのが、警察庁長官から政界入りした故・後藤田正晴氏である。法務大臣に就任すると、死刑を執行し「法務大臣の任務」と公言して憚らなかったし、この見識に識者は拍手したものである▼勿論—「死刑の是非」についての議論はあっていい。これは哲学的な難問だし、容易に解決するとも思えないが、近年は死刑を廃止する国が増えてもいる。だが、中国を始めアラブ諸国や日本も含め銃殺や電気椅子・絞首と執行の仕方は異なるが、実施している国も多いのである。日本の国民調査でも85%超が死刑制度を支持している▼数年前から始まった裁判員裁判でも死刑判決が確か2件あり、被告が控訴したけれども、高裁が棄却し地方裁判所の「死刑判決」を支持している。こうした司法界の動向や国民の意識調査にも目を配りながらの判断がより正しい記事を生むものだと信じたい。改革や変革ばかりに飛びつく愚かさを避けるのが筋としたい。(遯)