ニッケイ新聞 2012年4月4日付け
ジウマ大統領がインド訪問中に約束していた、工業界の国際競争力回復を主眼とする新たな景気刺激策が3日午前に発表されたとアジェンシア・ブラジルなどが報じた。
2011年の経済成長の足を引っ張り、今年1月の成長率は前月比マイナスと苦戦中の工業界を奮い立たせ、国内全般の景気をも刺激しようという新政策は、11年8月発表の〃より大きなブラジル(ブラジル・マイオール)計画〃第2弾と位置づけられている。
具体的な政策はギド・マンテガ財相が説明したが、発表前日の2日にマンテガ財相やフェルナンド・ピメンテル商工開発相らと最後の詰めを行ったジウマ大統領は3日、「危機乗り切りの最良の方法は景気後退への古い方策の中にはない」とした上、消費抑制からは経済成長が生まれないことを再度強調。政府が工業界を放置する事はないとも約束した。
ただ、3日付エスタード紙には、今回とられる政策は2009年の国際的な金融危機の時やブラジル・マイオール第1弾で採用済みの内容で、第1弾は思うような効果を上げていないと述べているのが気がかりだ。第1弾では服飾や製靴などの限定業種だけだった減免税の対象を15の業種に拡大、好調だった自動車産業なども含む脱工業化防止対策となった事は、8カ月前の予想を大きく覆すほど工業界の不振が全体に及んだ証拠だ。
具体的な政策は、レアル高を防ぐための為替対策の強化とドル流入を防ぐための金融取引税課税率の調整、給与の20%と定められている企業負担分の国立社会保険院(INSS)納税額を11業種で利益の1〜2・5%に変更、輸入品への社会統合基金(PIS)と社会保険融資納付金(Cofins)課税率の引上げ、外国製品との差が25%までの国産品の優先購入など。
INSSの納税基準変更で恩恵を受ける企業には従業員の解雇を禁ずるなど、企業への支援と雇用確保を抱き合わせるやり方は失業率の拡大を防ぐため。雇用増加と所得向上による消費促進との考えを反映している。
また、社会経済開発銀行(BNDES)からの融資額を増額、貸付金利もインフレ率以下に抑える事で資金調達を容易にし、生産活動や輸出の拡大を図る一方、税関などでの輸入品監査も強化するという。
情報・通信産業に対しても、電話や通信業界への工業製品税(IPI)やPIN/Cofinsの減税、公立校生徒向けのコンピューター購入計画を2015年まで延長するなどの政策を導入。
3日発表の政策に対して、全国工業連合(CNI)は現実に即したものと評価したが、サンパウロ州工業連盟(Fiesp)は、政策の内容を肯定的に受け止めつつも、この程度では一度失った国際的な競争力回復には不充分との見解を表明している。