ニッケイ新聞 2012年4月5日付け
3月9日から続いていた作業員ストが終結したばかりのジラウ水力発電所の建設工事が、3日未明の火災のため、再び中断と4日付伯字紙が報じた。ロンドニア州マデイラ川沿岸に建設中の同発電所では、昨年3月にも放火事件が起き、工事が6カ月遅れる事態が起きている。
09年6月着工のジラウ発電所と、同じマデイラ川沿岸で08年8月着工のサントアントニオ水力発電所は、3750メガワットと3150メガワットの発電能力を持つ予定の大型発電所だ。
ジラウでは3月9日から、サントアントニオでは同20日からストが始まり、工事が中断。1500レアル以下の作業員給与を7%、それ以上の作業員の給与は5%調整という労働地裁の調停案を受け入れ、一時的にスト中断と決めたのが2日午後だが、作業再開と見られていた3日未明の火災で工事再開のめどが立たなくなった。
火災は作業員宿舎の脇にある草むらに置かれたマットレスに点けられた火が原因とされ、瞬く間に燃え広がった火は、川の右岸にあった57棟の宿舎の内36棟を焼き尽くし、就寝中の作業員らは大混乱。騒ぎに乗じた窃盗も起きた。
同発電所では昨年3月にも作業員とバス運転手の喧嘩がもとで45台のバスと宿舎に放火する騒ぎが起きたが、今回の火災は真夜中の事で、作業員一人が心筋梗塞を起こして死亡。約7千人の作業員中3千人が着の身着のまま焼け出された。
工事の責任を負うカマルゴ・コレア社は、近隣の作業員を自宅に送り届け、遠方からの作業員には旅費を支給して、ことが落ち着くまで待機するよう指示を出したが、300人は即時辞職を申し出た。作業員の組合ではもともと、30%の給与調整を勝ち取るまで交渉を続けるつもりで、スト終結とはいえ、いつスト再開となるか分からない状態だった。
政府主導の経済活性化計画(PAC)の対象であるジラウ発電所は、12年10月に運転開始の予定で、鉱山動力省は3月末時点でストの影響はほとんどないとしていたが、今回の工事中断は期間未定で、運転開始が遅れる可能性も強い。
一方、今年前半に運転開始予定のサントアントニオ発電所は、作業員のストにも関わらず、3月30日から71・6メガワットの発電能力を持つタービン二つを稼動させて商用運転を開始。
一方、パラー州のシングー沿岸で11年6月に着工されたベロ・モンテ水力発電所は、3月28日からスト入りしたが、作業を再開しなければ給与調整の交渉に応じないといわれストを中断。4日から作業再開という。
3発電所とも、スト中は警察や治安部隊が派遣され、労使交渉は難航。PAC工事は遠方からの作業員も多く、作業員が家族に会いに戻るための休暇や給与調整などの労働条件の改善は、どこの現場でも悩みの種だ。